日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-AE 天文学・太陽系外天体

[P-AE20] 系外惑星

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:生駒 大洋(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、成田 憲保(東京大学)

[PAE20-P05] 強い圧縮性をもつマントルの熱対流シミュレーション: スーパー地球のマントル対流に対する物性変化と内部発熱の影響

*亀山 真典1,2 (1.国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:スーパー地球、マントル対流、断熱圧縮

巨大な地球型惑星「スーパー地球」が近年に次々と発見されてきたことを受け、スーパー地球のマントルダイナミクスの研究が現実味のあるターゲットとなってきた。その際に考慮すべき重要な点の1つは、スーパー地球のマントルの「厚さ」である。厚いマントルの中では熱輸送の効率が低下するため、マントル内部が十分に排熱されないことも考えられる。加えて、スーパー地球のマントル内部では圧力が高くなったことを受けて物性値が大きく変化するだけでなく、断熱圧縮の効果が流れの様式に強く影響していると予想される。本研究では強い圧縮性に加え、粘性率・熱伝導率の空間変化や内部発熱を持つ流体の熱対流シミュレーションを行い、スーパー地球のマントル対流の様相を考察した。

本研究では地球の10倍の質量を持つスーパー地球のマントルを想定し、深さ6000km、縦横比1:4の2次元箱型領域内での圧縮性流体の熱対流を考える。ここでは非弾性流体近似を用いることにより、流体の上昇/下降に伴う断熱的温度変化の効果を取り入れている。さらにマントル物質の粘性率は温度とともに指数関数的に減少し、熱伝導率は深さとともに指数関数的に増加すると仮定した。これらの物性量の依存性や内部発熱の強さを系統的に変化させて熱対流シミュレーションを行い、内部の対流様式や熱構造の変化を観察した。

その結果、粘性率の温度依存性と熱伝導率の深さ依存性の双方とも十分に大きい場合には、上面沿いに発達する「冷たくて固いふた (stagnant lid)」に加えて、底面直上には「深部成層圏 (deep stratosphere)」とも呼ぶべき特異な層が形成されることが分かった。この層の内部は (i) 安定な温度成層と (ii) 鉛直方向の流れが非常に弱い、という点で特徴づけられ、気象学の「成層圏」の性質によく似ている。この特異な層が発達する理由は、上面で「冷たくて固いふた」が厚く発達したことに加え、深部での熱伝導率が高くなっていることである。この両者によってマントル内部の温度が全体的に上昇し、断熱温度変化が鉛直方向の流れを抑制する効果が強まった結果、安定な温度成層をもつ「深部成層圏」が形成されたと理解することができる。さらに内部熱源による発熱率が高くなるほど、「深部成層圏」の形成が促進されることも分かった。

本研究の結果より、粘性率の温度依存性と熱伝導率の深さ依存性の双方とも十分に大きいマントルをもつスーパー地球では、表面に「冷たくて固いふた」が、加えてマントル最下部には「深部成層圏」が形成されることが期待される。よって表面にプレート運動のない「スーパー地球」の中には、そのマントルの深部に「深部成層圏」を持っているものが含まれているのかもしれない。