日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG21] 宇宙・惑星探査の将来計画と関連する機器開発の展望

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、笠原 慧(東京大学)、亀田 真吾(立教大学理学部)、吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

[PCG21-P03] 信号処理によるPc1地磁気脈動地上観測のパルス性雑音除去

*駒瀬 文弥1井上 智寛1尾崎 光紀1八木谷 聡1塩川 和夫2能勢 正仁2長妻 努3 (1.金沢大学、2.名古屋大学、3.情報通信研究機構)

キーワード:Pc1地磁気脈動、雑音除去、信号処理

磁気圏で発生するプラズマ波動の一種であるElectromagnetic ion cyclotron(EMIC)波動は磁力線に沿って伝搬し、地上においてPc1脈動(0.2~5 Hz)と呼ばれる地磁気の変動として観測される。我々はPc1脈動をカナダのカプスケーシングで地上観測している。地上観測は誘導磁力計を用いて行っており、地磁気の変動を高い時間分解能(64 Hz)で高感度に観測することができる。しかし、強い風などにより観測機器が振動すると、観測波形にパルス性の雑音が含まれてしまう。
本研究では、信号処理技術によって観測波形に含まれるパルス性雑音を除去し、Pc1脈動を抽出する方法について検討を行った。パルス性雑音の特徴として、Pc1脈動よりも広い周波数帯(0.1~10 Hz)にまたがり、Pc1脈動に対して存続時間が短いという点が挙げられる。パルス性雑音除去は、パルス性雑音候補区間の検出、Neural Network(NN)によるパルス性雑音候補区間の分類、およびパルス性雑音区間の波形補間の手順で行う。まず、観測波形の1点微分波形の振幅に閾値を設定し、閾値を超えた周辺をパルス性雑音候補区間とした。しかし、この手法ではパルス性雑音以外に高周波に高いエネルギーを持つ区間も検出する。そのため、NNを用いてパルス性雑音候補区間をパルス性雑音区間とそれ以外の区間に分類する。分類のための学習データには、パルス性雑音を強調するためにHPF(High pass filter)を適用した波形を用いた。最後にパルス性雑音区間の波形補間を行う。波形の補間にはエネルギーと位相が必要である。パルス性雑音区間のエネルギーはパルス性雑音区間周辺のエネルギー平均を用いた。位相については、ランダムな位相、観測波形の位相スペクトルを用いた観測位相、非線形最小二乗法による推定位相の3つの位相について検討した。各位相について、チャープ信号に観測波形から抽出したパルス性雑音を印可した波形をテスト信号とするパルス性雑音除去シミュレーションを行い、パルス性雑音除去前後のSNRで評価を行った。その結果、推定位相による向上SNRが22 dBと最も高くなったが、推定にかかる計算時間が膨大であるため用途に応じて使用する位相を変更することが重要であると分かった。以上のパルス性雑音除去手法を用いて実際の観測波形のパルス性雑音除去を行った結果、パルス性雑音を除去し、Pc1脈動を抽出することができた。
本発表では信号処理によるPc1脈動のパルス性雑音除去について詳細に報告する予定である。従来では、観測機器の振動を極力抑える観測環境を吟味、構築する必要があったが、そのコストを削減し、Pc1脈動のより詳細な解析に役立つと考えている。