日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG23] 宇宙における物質の形成と進化

2019年5月26日(日) 09:00 〜 10:30 201B (2F)

コンビーナ:三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、野村 英子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、大坪 貴文(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、瀧川 晶(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、座長:田崎 亮高橋 葵

09:45 〜 10:00

[PCG23-04] 急冷窒素含有炭素質物質の性質と宇宙曝露実験

*遠藤 いずみ1左近 樹1尾中 敬1癸生川 陽子2小林 憲正2三田 肇4矢野 創3 (1.東京大学、2.横浜国立大学、3.宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所、4.福岡工業大学)

有機物は現在の宇宙にありふれているが、その起源や、それらがどのように太陽系の生命の誕生に寄与したかについては未だ詳細はわかっていない。様々な天体物理環境で観測される未同定赤外バンドは、その担い手が有機物に関連すると考えられているため、宇宙における有機物の起源を考える上で重要な研究対象である。我々は、赤外特性が古典新星周囲の未同定赤外バンドを極めてよく再現する急冷窒素含有炭素質物質(Quenched Nitrogen-included Carbonaceous Composite; QNCC)の合成に初めて成功した。物性解析の結果、QNCCはN/C=3-5%の窒素を含んでいることがわかった。また、我々はQNCCがアミン(C-N)の構造を有し、それが古典新星で観測される未同定赤外バンドに特徴的な8µm付近のbroad な構造に寄与していることを見出した。QNCCの赤外吸収スペクトル中に見られたbroad な8µmの構造は、炭素質コンドライト中の不溶性有機物(IOM) の赤外特性にも見られることがわかっている。また、QNCCのN/C 比はIOMのN/C比(2-5%)とほぼ一致する。これらのことから、QNCCは太陽系初期の有機物の起源を探る上で重要な物質であると考えられる。これらの結果を踏まえて、我々は現在、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟汎用宇宙曝露実験用ハンドレール取り付け機構ExHAMを利用した、QNCCの宇宙環境曝露実験に着手した。本宇宙曝露実験により、晩期型星を起源とする有機物(QNCC)が太陽近傍における宇宙環境曝露によって獲得する物性を明らかにし、太陽系初期の有機物(IOM)との比較を行うことにより、晩期型星を起源とする有機物星間空間を漂ったのち太陽系初期の有機物に寄与する可能性を検証する。本講演では、これまで室内合成実験および物性分析の結果、新星周囲の未同定赤外バンドの担い手の最も有力な候補と考える急冷窒素含有炭素質物質(QNCC)の性質とその宇宙曝露実験計画の最新の進捗状況を述べる。