[PCG23-P01] 純炭素グラフェン分子による惑星状星雲の赤外スペクトル解析
キーワード:惑星状星雲、グラフェン、赤外スペクトル
恒星終末期の惑星状星雲は星間ダスト源の有力候補である。特にTc1やLin49などの炭素星では特徴的な赤外スペクトル(IR)が見られる[1]。これらは球状の炭素フラーレン分子(C60やC70など)によると理解されてきた[2]。しかしスペクトルにはフラーレンでは解釈しきれない多数のバンドがある。多くのフラーレン合成実験(地上)では、平板状の炭素分子であるグラフェンが付随することが多い。そこでグラフェンも炭素星大気中にあるのではないかと考え、その可能性を第一原理計算で探った。
グラフェンの一例として6員環7個からなる(C24)分子を端緒に、量子化学計算を行った。用いたソフトはGaussian09で、最適構造と分子振動計算から赤外スペクトルを求めた。この際天体物理条件を課した。すなわち①恒星風(高速プロトンが主)によるグラフェン内部の空孔形成、②中心星からの紫外線照射による光イオン化(陽イオン)である。
計算の結果、観測スペクトルを最も良く再現できたのは、炭素5員環1個と6員環6個からなるグラフェン分子(C23)であった。イオン状態としては中性および1価と2価の3状態の合算である。波長5~25ミクロンの範囲での観測バンドは16個である。フラーレンではこのうち8個が合致する。一方、グラフェン(C23)では16個の全バンドで合致した。グラフェンが優位な理由としては、①炭素蒸気からの合成実験では収率が圧倒的に高いこと、②対称性がフラーレンより低く赤外活性バンドが多いことなどが挙げられる。以上から、炭素星ではグラフェンが重要なダスト成分になっていると考えられる[3]。
参考文献
[1] Otsuka M. , et al., Monthly notices of the royal astronomical society, vol.462 issue 1, p-12 (2016)
[2] Cami J. , et al., Science, vol.329, p-1180 (2010)
[3] Norio Ota, arXiv 1811.05043 (2018)
グラフェンの一例として6員環7個からなる(C24)分子を端緒に、量子化学計算を行った。用いたソフトはGaussian09で、最適構造と分子振動計算から赤外スペクトルを求めた。この際天体物理条件を課した。すなわち①恒星風(高速プロトンが主)によるグラフェン内部の空孔形成、②中心星からの紫外線照射による光イオン化(陽イオン)である。
計算の結果、観測スペクトルを最も良く再現できたのは、炭素5員環1個と6員環6個からなるグラフェン分子(C23)であった。イオン状態としては中性および1価と2価の3状態の合算である。波長5~25ミクロンの範囲での観測バンドは16個である。フラーレンではこのうち8個が合致する。一方、グラフェン(C23)では16個の全バンドで合致した。グラフェンが優位な理由としては、①炭素蒸気からの合成実験では収率が圧倒的に高いこと、②対称性がフラーレンより低く赤外活性バンドが多いことなどが挙げられる。以上から、炭素星ではグラフェンが重要なダスト成分になっていると考えられる[3]。
参考文献
[1] Otsuka M. , et al., Monthly notices of the royal astronomical society, vol.462 issue 1, p-12 (2016)
[2] Cami J. , et al., Science, vol.329, p-1180 (2010)
[3] Norio Ota, arXiv 1811.05043 (2018)