日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG24] アルマによる惑星科学の新展開

2019年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 105 (1F)

コンビーナ:武藤 恭之(工学院大学 教育推進機構)、百瀬 宗武(茨城大学理学部)、佐川 英夫(京都産業大学理学部)、下条 圭美(国立天文台)、座長:武藤 恭之

09:00 〜 09:15

[PCG24-01] ALMA観測による太陽大気構造の理解

★招待講演

*川手 朋子1岡本 丈典2岩井 一正3増田 智3下条 圭美2 (1.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、2.国立天文台、3.名古屋大学)

キーワード:太陽、放射過程、彩層

ALMA はサイクル4からband3およびband6による太陽観測を開始した。band3,6で観測する100GHzや240GHzの電磁波は、太陽表面では主に彩層におけるfree-free放射であり、輝度と電子温度がプランク関数で直接関連付けられると考えられる。これまでの彩層観測では紫外線から近赤外線の吸収線を用いることが一般的であり、これらの吸収線は非局所熱力学平衡下にあるため温度放射領域の温度の診断が困難であった。したがって、ALMAで太陽大気構造の新たな物理診断が可能となった。

一方、ミリ波の輝度と電子温度を直接比較できるものの、太陽大気中のどの領域の放射であるかは理解されてはいない。モデル大気や観測データを用いた彩層輝線とミリ波放射の比較は、ALMAの太陽観測開始前後から行われてきた。しかし太陽大気の温度構造は多様であり、単純比較によるミリ波放射形成高度の推定は難しい。したがって、ALMAを用いて太陽大気温度構造を理解するためには、多波長観測による構造比較と同時に、大気構造ごとにALMA・彩層輝線双方の放射過程の理解が必要となる。

われわれは、ALMAサイクル4で観測されたプラージュ領域を詳細解析した。他の観測との比較としてHinode/SPを用いた光球磁場、IRISによる彩層・遷移層撮像分光、SDO/AIAによる彩層およびコロナ撮像を用いた。その結果、ALMAデータ中で時間変動している構造は彩層の音速に対応する速度を持っており、彩層における現象として理解できるものの、ミリ波と彩層輝線の間で観測される構造は必ずしも対応していなかった。本講演ではこれまで議論されてきたミリ波の形成高度を参照しながら、本研究における観測結果および太陽大気モデルにおける連続光放射領域の計算結果を踏まえて、ALMAで観測する太陽が何を表しているかを議論する。