日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG24] アルマによる惑星科学の新展開

2019年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 105 (1F)

コンビーナ:武藤 恭之(工学院大学 教育推進機構)、百瀬 宗武(茨城大学理学部)、佐川 英夫(京都産業大学理学部)、下条 圭美(国立天文台)、座長:百瀬 宗武(茨城大学)

11:45 〜 12:00

[PCG24-10] うみへび座TW星周囲のギャップを持つ原始惑星系円盤でのダスト進化

*松浦 孝之1奥住 聡1 (1.東京工業大学)

キーワード:原始惑星系円盤、うみへび座TW星

原始惑星系円盤は惑星形成の場である.惑星形成を議論する際に,原始惑星系円盤の構造や進化を理解することは重要である.特に円盤におけるダストの進化を理解するうえで理想的な天体の1つが,うみへび座TW星 (TW Hya)である.TW Hyaは原始惑星系円盤を持つ若い星であり,この円盤は様々な波長で観測が行われてきた.特に,電波望遠鏡ALMAによる最新の高分解能観測によって,TW Hya周囲の円盤は22 au,37 auにダストのギャップを持つことなどが明らかになった.
ギャップ形成のメカニズムは様々なものが提唱されているが,その中の1つに惑星と円盤の重力相互作用によるものがある.近年,惑星の存在する円盤におけるガスおよびダストの進化シミュレーションが盛んに行われている.その結果,そのような円盤でのダストの分布は,円盤ガスの物理的性質や惑星の質量だけでなく,ダストの合体成長物(アグリゲイト)のサイズにも大きく依存することが明らかになっている.そして,アグリゲイトのサイズは,円盤のガスの乱流強度やアグリゲイトの強度に依存する.
そこで本研究では,ダスト成長理論とTW Hya円盤のALMA観測との比較を通じて,この円盤に存在する惑星やダストの物理的性質を探ることを目的とする.具体的には,22 au, 37 auに惑星をもつガス円盤を仮定し,そこでのダストの面密度および代表サイズの動径分布の進化をダストの成長・破壊・落下・拡散を考慮して計算した.惑星質量とダストの衝突破壊速度(大規模な破壊が起こり始める衝突速度)をパラメータとし,ALMAによって得られているTW Hyaのミリ波輝度温度およびスペクトル指数の動径分布が再現されるようなパラメータ範囲を模索した.
その結果,惑星質量を4―10地球質量,ダスト衝突破壊速度を0.5 m s-1と仮定した場合に観測の結果がある程度再現された.ダスト衝突破壊速度をベストフィット値からより大きく仮定すると,ギャップより内側のダストが枯渇し,ギャップ外縁にダストが過剰に多く集積する.惑星質量をより大きく仮定すると,ギャップ外縁にダストがより多く集積し,ギャップのコントラストが過剰に大きくなる.
本研究で得られたダスト衝突破壊速度は,従来の円盤ダストの成長理論から期待されていた値よりも小さく,アグリゲイトを構成している氷微粒子の粒径が10 μm以上の大きなサイズである可能性(Wada et al., 2013)や,構成微粒子の表面がCO2氷で覆われている可能性(Musiolik et al., 2016)を示唆している.また,惑星のもととなる微惑星は,少なくともTW Hyaのギャップが見られる領域においては,ダストの直接合体成長とは異なる過程で形成された可能性を示唆している.