日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、藤本 晶子(九州工業大学)、堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

[PEM11-P10] MAGDAS9システムの10Hzデータによる,Pc1-2脈動の全球分布特性解明

*樺澤 大生1吉川 顕正1魚住 禎司1藤本 晶子1阿部 修司1 (1.九州大学)

キーワード:Pc1-2脈動、EMIC波動、全球結合

地球の磁場(地磁気)は磁気嵐やオーロラ嵐等の宇宙天気現象の影響を受け,日々刻々と変化し続けている。地磁気変動現象のうち,変動周期が約数秒~1000秒程度の周期性を持つ磁場擾乱現象は古くから知られており,地磁気脈動と総称される。地磁気脈動は,地球周辺の宇宙空間(ジオ・スペース)に生起する様々な宇宙天気現象,ジオ・スペースと大気・地球システムの結合過程を反映した結果として励起されることから,その発現・伝播メカニズムの解明は,太陽地球系物理学の主要テーマの1つでもある。地磁気脈動はその波形的特徴及びその変動周期に基づき細かく分類されており,本研究で主に扱う「Pc1脈動」及び「Pc2脈動」は地磁気脈動の中でも連続的又は規則的な波として観測され,かつ変動周期がそれぞれ0.2-5秒,5-10秒の比較的高周波な地磁気変動を指す。

 高緯度領域を中心に励起されるPc1脈動は,磁気赤道面での粒子加速を引き起こすEMIC波動励起に伴い観測される地磁気脈動と理解されており,地上に到達した後,電離層F層ダクト中を伝搬することが知られているが,そのグローバルな発生・伝搬特性については明らかにされていない。Pc1脈動より高周波の磁場擾乱現象を観測するときはInduction磁力計を使用するが,現段階で中低緯度・赤道領域までをカバーするグローバルなInduction磁力計は存在しない。一方でグローバルな低周波磁気擾乱現象の観測にはFluxgate磁力計を使用することが一般的であるが,その時間精度は1秒値が通常であるため,高周波Pc1-2脈動の解析には不向きであるとされている。

 九州大学が展開する,Fluxgate磁力計による地上多点磁場観測ネットワーク(MAGDAS)は,250Hzサンプリング,10Hz平均値データを取得しており,従来の研究では不十分であったPc1-2脈動現象の全球発生特性を調査することができる唯一の地磁気ネットワーク観測網である。

解析・結果
 本研究ではMAGDAS磁場データ,京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料センターのDst/AE指数データを使用し,極域から赤道域までの広範囲に渡るPc1-2脈動の同時発生イベントについて,解析を行った。その結果,ストーム中のサブストーム時を中心に,高緯度から中低緯度領域で発生するPc1脈動と同時に,磁気赤道領域まで到達するPc2脈動が確認された。EMIC励起に伴うPc1−2脈動の発生特性の解明は,地上からEMICの発生をモニター可能とする宇宙天気な応用のみならず,内部磁気圏から高緯度−中低緯度−磁気赤道領域を同時にカバーする超グローバルな結合過程の解明に於いても非常に重要である。特に周期帯が5-10秒のPc2脈動に関してはF層ダクト伝搬が可能かどうかも不明であり,新しい結合メカニズムの創案も必要となるかもしれない。

 本講演ではこのようなPc1-2脈動の発生特性に関する初期報告を行うとともに,その地方時分布, FM-CWレーダーやイオノゾンデのデータとの比較による電離層構造変化との関連性,PWINGによる高緯度地域でのPc1発生特性,ERG衛星(直接観測)による宙空環境でのEMIC発生特性の同時解析等,包括的なアプローチによる内部磁気圏-高緯度−中低緯度−磁気赤道領域結合過程解明の研究アプローチについても議論する予定である。