日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、藤本 晶子(九州工業大学)、堀 智昭(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

[PEM11-P11] 地球磁気圏尾部における磁気リコネクション境界領域の直接観測

*荒木 瑞穂1星野 真弘1桂華 邦裕1斎藤 義文2 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.宇宙科学研究所)

キーワード:磁気リコネクション、MMS衛星、地球磁気圏尾部

磁気リコネクションは磁場エネルギーをプラズマの熱エネルギー・運動エネルギーに変換する重要な物理機構である。特にPetschekリコネクションにおいてはその散逸領域に加えて、境界に形成されるスローショックにおけるプラズマの加速・加熱の影響を考慮しなければならない。磁気圏尾部遠方ではGEOTAIL衛星等を用いた直接観測によって、プラズマシート・ローブ境界層(PSBL)におけるスローショックの構造が明らかにされた(Saito et al., 1995)。これによれば磁気圏尾部遠方については、PSBL観測例のうちおよそ10%がランキン・ユゴニオ(RH)関係式を満たすMHD的スローショックであると指摘している。しかしその割合がどのような要因により決定するのか、またスローショックとみなせる領域とそうでない領域との差異(イオン・電子の加熱メカニズム、エネルギー分配)については未だ明らかではない。

 本研究では、地球近傍における磁気圏尾部の磁気再結合境界領域について複数編隊衛星による直接観測を行った。具体的には、MMS衛星が磁気圏尾部を観測していた2017年6月~8月におけるbusrt-mode観測を行った全イベント中、PSBLまたはプラズマシート内におけるデータのうち、磁気再結合境界領域を観測していると思われるイベントを、アウトフロー領域におけるイオンフローの速度に着目して抽出した。ここでは粒子観測器FPI(Fast Plasma Investigation)、磁場観測機FGM(Fluxgate Magnetometer)を用いた。これらのイベントについてイオン・電子の温度変化、および温度比の変化について確認した。

 観測されたイベントは、上流のプラズマベータによって2種類に分類できた。ベータ値が0.1以下のものと、1近くのものである。この研究ではそれぞれ”ローブリコネクション”、”プラズマシートリコネクション”と呼称する。前者では再結合する磁場がPSBLまで達し、ローブ領域の薄く冷たいプラズマが流入している。一方後者では再結合している磁場はローブまで届かず、プラズマシートの内部にインフロー領域が存在することで熱く密度の大きいプラズマが流入する。

 ローブリコネクションでは、境界領域を通過したイオンは数100eVから数keVまで温度上昇する。一方、プラズマシートリコネクションではインフロー領域での温度が1keV程度であるが、やはり数keVまでの上昇を見せる。電子はイオンに比べると温度上昇は小さく、せいぜい1keV程度までである。一方でイオン対電子の温度比を見ると、どちらのリコネクションイベントについてもアウトフロー領域での温度比は5程度である。これは磁気圏の領域ごとの温度比を観測したWang et al.(2012)の、磁気圏尾部プラズマシートにおける温度比の観測結果と一致している。

 これらの結果を用いて、磁気リコネクション境界領域における加熱メカニズム、エネルギー分配の問題について議論する。