[PEM13-P03] Pc4-5帯ULF波動と同期したホイッスラーモード・コーラス放射の発生と高エネルギー電子との対応について
キーワード:ULF波動、コーラス放射
地球磁気圏の磁気赤道領域で発生するホイッスラーモード・コーラス放射は、波動粒子相互作用を通して高エネルギー電子の大気への降り込みや放射線帯粒子の内部加速過程に関与していると考えられている。そのため、地球電磁圏の変動現象について考察する上でコーラス放射の発生機構を理解することは本質的に重要である。コーラス放射の発生機構に関係すると考えられている現象の1つとして、地球磁気圏で発生する低周波のプラズマ波動であるULF波動が挙げられる。Li et al. (2011) をはじめとした複数の研究では、周期が約1-10分の Pc4-5帯 ULF波動のうち、compressionalモードの波動によって背景磁場強度が減少する位相において、コーラス放射が周期的に発生することが報告されている。一方Jaynes et al. (2015) では、コーラス放射の周期的な発生はトロイダルモードならびにポロイダルモードのPc4-5帯 ULF波動と対応関係があり、ULF波動の1振動周期の間にコーラス放射が2回発生することが指摘されている。このように過去の研究では、コーラス放射の周期的な発生とULF波動の間に、ULF波動のモードごとに異なった対応関係が存在する可能性が示唆されている。コーラス放射の発生には波動励起領域での高エネルギー電子の温度異方性が大きく関わっていると考えられており、周期的発生の要因を理解するためには、高エネルギー電子のピッチ角分布がどのように変化するかを併せて考慮する必要がある。
本研究では、コーラス放射の周期的発生とULF波動の対応関係について理解することを目的として、あらせ衛星の波動・粒子観測結果を解析する。2017年3月から4月にかけて実施された、あらせ衛星と地上観測局とのキャンペーン観測期間中に得られた結果に着目し、プラズマ波動・電場観測器(PWE)のOnboard Frequency Analyzer (OFA)と磁場観測器(MGF)の観測データの解析を行った。その結果、2017年3月27日21:30-22:00 UTに周期2-3分程度のPc4-5帯に対応するULF波動と、ULF波動の周期と同様の繰返し周期で発生するコーラス放射が同時に見出された。解析対象とした時間帯には、あらせ衛星は磁気地方時04:00程度、磁気緯度-10°程度、L値6程度の磁気赤道面付近の朝側領域に位置していた。本イベントではPc4-5帯の周期的な磁場変動はポロイダル成分、トロイダル成分とcompressional成分の全ての成分に1 nT以上の有意な振幅が確認され、特にトロイダル成分の振幅が卓越していることが示された。これらのMGFならびにOFAの観測結果を比較した結果、トロイダルモードのPc4-5帯ULF波動の磁場成分が西向きに卓越する位相においてコーラス放射が発生する対応関係が確認された。この対応関係はJaynes et al. (2015)で報告された対応関係とは異なるものである。次に、観測されたコーラス放射と共鳴条件を満たす電子のエネルギーを評価した。共鳴エネルギーの算出において必要となるプラズマ周波数fpと電子サイクロトロン周波数fceの比(fp/fce)は、PWEのHigh Frequency Analyzer (HFA)により観測された波動スペクトルから読み取られた高域混成共鳴周波数とMGFの観測結果に基づいて算出した。その結果、fp/fceは3.3-3.4と見積もられ、周波数が0.1-0.2 fceのホイッスラーモード波動に対する共鳴エネルギーは100-400 keV程度と求められた。ここで推定された共鳴エネルギーは典型的なコーラス波動に対する共鳴エネルギーと比べて大きな値であるが、これは本イベントで観測されたコーラス波動の周波数帯が0.1-0.2 fce程度と典型的なコーラス波動の周波数帯と比べて低いことが要因であると考えられる。
さらに本研究では、解析対象とした時間帯での高エネルギー電子の観測結果を解析した。高エネルギー電子分析器(HEP)の観測結果からは、100-400 keV帯の電子のフラックスおよびピッチ角分布にはULF波動やコーラス放射の周期的発生と対応する顕著な変動は認められなかった。一方、中間エネルギー電子分析器(MEP-e)の観測結果から、40-60 keVの電子のフラックスおよびピッチ角分布に、ULF波動およびコーラス放射の周期的発生と対応する変動が認められた。観測されたコーラス放射の共鳴エネルギーに対応するエネルギー帯の粒子に顕著な変動が見られなかった理由として、あらせ衛星が磁気赤道面から外れた位置に位置していたため、波動の励起領域を直接観測できなかった可能性が考えられる。
本研究では、コーラス放射の周期的発生とULF波動の対応関係について理解することを目的として、あらせ衛星の波動・粒子観測結果を解析する。2017年3月から4月にかけて実施された、あらせ衛星と地上観測局とのキャンペーン観測期間中に得られた結果に着目し、プラズマ波動・電場観測器(PWE)のOnboard Frequency Analyzer (OFA)と磁場観測器(MGF)の観測データの解析を行った。その結果、2017年3月27日21:30-22:00 UTに周期2-3分程度のPc4-5帯に対応するULF波動と、ULF波動の周期と同様の繰返し周期で発生するコーラス放射が同時に見出された。解析対象とした時間帯には、あらせ衛星は磁気地方時04:00程度、磁気緯度-10°程度、L値6程度の磁気赤道面付近の朝側領域に位置していた。本イベントではPc4-5帯の周期的な磁場変動はポロイダル成分、トロイダル成分とcompressional成分の全ての成分に1 nT以上の有意な振幅が確認され、特にトロイダル成分の振幅が卓越していることが示された。これらのMGFならびにOFAの観測結果を比較した結果、トロイダルモードのPc4-5帯ULF波動の磁場成分が西向きに卓越する位相においてコーラス放射が発生する対応関係が確認された。この対応関係はJaynes et al. (2015)で報告された対応関係とは異なるものである。次に、観測されたコーラス放射と共鳴条件を満たす電子のエネルギーを評価した。共鳴エネルギーの算出において必要となるプラズマ周波数fpと電子サイクロトロン周波数fceの比(fp/fce)は、PWEのHigh Frequency Analyzer (HFA)により観測された波動スペクトルから読み取られた高域混成共鳴周波数とMGFの観測結果に基づいて算出した。その結果、fp/fceは3.3-3.4と見積もられ、周波数が0.1-0.2 fceのホイッスラーモード波動に対する共鳴エネルギーは100-400 keV程度と求められた。ここで推定された共鳴エネルギーは典型的なコーラス波動に対する共鳴エネルギーと比べて大きな値であるが、これは本イベントで観測されたコーラス波動の周波数帯が0.1-0.2 fce程度と典型的なコーラス波動の周波数帯と比べて低いことが要因であると考えられる。
さらに本研究では、解析対象とした時間帯での高エネルギー電子の観測結果を解析した。高エネルギー電子分析器(HEP)の観測結果からは、100-400 keV帯の電子のフラックスおよびピッチ角分布にはULF波動やコーラス放射の周期的発生と対応する顕著な変動は認められなかった。一方、中間エネルギー電子分析器(MEP-e)の観測結果から、40-60 keVの電子のフラックスおよびピッチ角分布に、ULF波動およびコーラス放射の周期的発生と対応する変動が認められた。観測されたコーラス放射の共鳴エネルギーに対応するエネルギー帯の粒子に顕著な変動が見られなかった理由として、あらせ衛星が磁気赤道面から外れた位置に位置していたため、波動の励起領域を直接観測できなかった可能性が考えられる。