日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] 内部磁気圏

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、Danny Summers(Memorial University of Newfoundland)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、齊藤 慎司(名古屋大学 大学院理学研究科)

[PEM13-P13] PARM:観測ロケットG-CHASER(RockSat-XN)搭載オーロラカメラの開発と観測結果およびLAMPロケット実験搭載カメラ開発状況

*八木 直志1坂野井 健1吹澤 瑞貴1浅村 和史2三好 由純3細川 敬祐4石澤 元気5 (1.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部、3.名古屋大学宇宙地球環境研究所、4.電気通信大学大学院情報理工学研究科、5.東北大学大学院理学研究科宇宙地球電磁気学分野)

キーワード:オーロラカメラ、ロケット実験

我々はオーロラ観測カメラ(AIC)を、NASAとAndoya Space Centerとコロラド大学が主催し、2019年1月に実施されたG-CHASER(RockSat-XN)ロケット実験に向けて開発した。さらに、マイクロバースト(相対論的電子降下)とPsAの関係解明を目的としたLAMPロケット実験があり、2020年に打ち上げが予定されている。今回我々は、AICの開発成果及びG-CHASER(RockSat-XN)ロケット実験での結果、そしてLAMPロケット実験へ向けた開発状況を報告する。

G-CHASERには、日本のPulsating AuRora and Microburst(PARM)に加えて、米国、ノルウェーなど計7グループの研究・教育目的の装置が搭載された。PARMは中間エネルギー(20 - 100keV)電子計測器MED、高エネルギー(数百keV - 2MeV)電子計測器HEP、フラックスゲート磁力計AFG、オーロラカメラAIC から構成される。我々はAICの開発として、2018年1月から7月にかけて感度校正実験、電気機能試験、機械加工、フォーカス調整、振動・真空・熱試験を行った。AICは検出器ユニットAIC-Sと電源・データ処理エレキユニットAIC-Eから構成される。AIC-Sは、波長665nmよりも長波長の光を透過する光学フィルター(RG665)、広角レンズ(視野96.4 x 74.0度、F値1.6、焦点距離3.5mm)、CCDカメラ(Watec 910HX)からなる。

G-CHASER は、2019年1月13日9時UTにNASA の決定によりノルウェー・アンドーヤ宇宙センター(北緯69.3度、東経16.0度)から打ち上げられた。この時刻はすでに地上の太陽天頂角が-4度で薄明が開始しており、高度15km以上は日照であった。打ち上げから高度82.9kmまではロケット胴部スカートが閉じており、その継ぎ目からの漏れ光をAICは飽和することなく観測した。この変動解析から、上昇中のロケットスピン周波数は高度~20kmで~5Hz、高度~80kmで~1Hzであったと見積もられた。この結果は、AFGが観測した磁場強度の周期的な変化から推定されるスピン周波数と整合的であった。AICは脈動オーロラ数百kRを捉える感度性能を持っていたが、高度82.9kmでロケットスカートが分離された以降は、日照領域中のため観測光量は飽和したため、残念ながらオーロラ観測はできなかった。

さらに、PsA及びマイクロバーストのロケット観測行うことを目的とし、NASA/GSFCのDr. Sarah JonesがPIを務めるLAMPロケット実験が2019年冬期にアラスカ・ポーカーフラットリサーチレンジより打ち上げ予定で進められている。日本からは高エネルギー(数百keV - 2MeV)電子計測器HEP、フラックスゲート磁力計MIM、オーロラカメラAIC 2が搭載される。我々は現在AIC2の開発を進めている。AIC2は2台のカメラで構成され、検出器ユニットAIC2-S1/AIC2-S2と電源・データ処理エレキユニットAIC2-Eから成る。AIC2-Sは検出部にCMOSカメラZWO ASI183MMを採用している。AIC2-S1,S2とAIC2-Eはデスパンテーブルの上に搭載され、姿勢制御された状態で撮像する。AIC2-S1は、N2 1stPGを対象とし、直焦点光学系(F値0.95、焦点距離17mm、視野27x27度)から成る。一方AIC2-S2は0I844.6nmを対象とし、RockSat-XN実験と同じ対角視野120度の広角レンズ(F値1.6、焦点距離3.5mm)から構成される。AIC2-S1は磁力線足元方向の水平距離100x100km以上を数km以下の空間分解能で観測しPsAの微細構造を捉え、AIC2-S2はPsAの高度分布(特にF領域発光)や広範囲でのPsA分布を取得する。降下電子のエネルギー推定はOI 844.6nmとN2 1stPGの比を取ることで見積もることができる。カメラの制御と画像取得はボードコンピュータNanoPi M4がUSB3.0の高速通信を介して行う。これまでの実験から、約10Hzの高速サンプリング性能を確認している。NanoPi M4が10Hzで取得した3660x3660画素の画像は60 x 60 bin (1bin を61 x 61pixel)に圧縮される。AIC2の2波長・詳細かつ10Hzサンプリング画像から、PsA水平分布や高度分布の時間変動が明らかになる。また、発光と降下電子データとの比較や、発光波長比の時間変化から、Chorusによりマイクロバースト(相対論的電子降下)が発生するモデルの検証が可能となることが期待される。