[PEM13-P14] 地上全天カメラと内部磁気圏衛星あらせによるサブオーロラ帯のSARアークの初めての同時観測
キーワード:あらせ、SARアーク、全天カメラ、同時観測
Stable Auroral Red(SAR)アークは、オーロラの一種で、オーロラオーバルより低緯度のサブオーロラ帯に酸素原子の赤線 (630.0 nm)が卓越するオーロラである。この発光の元となる降り込み電子のエネルギーは数eVと言われている。この降り込み電子の生成は、プラズマ圏とリングカレントの空間的重なりにより、プラズマ圏の電子がリングカレントのイオンによって温められることで起こると予測されている。しかしSARアークについて、電離圏衛星と全天カメラで同時観測した例はあるが、電子加熱が起こっている内部磁気圏で、SARアークに対応するプラズマ粒子や電磁場変動が直接観測されたことはこれまでなかった。そこで本研究では、サブオーロラ帯にあるフィンランドのNyrola (62.34 N, 25.51 E, MLAT 59.4 N)に設置された全天カメラと内部磁気圏衛星あらせによって2017年3月28日22:04 UTに同時に観測されたSARアークについて詳細な解析を行い、内部磁気圏におけるSARアークの発生メカニズムについて調査した。調査の結果、あらせ衛星がSARアークを横切った時間に、あらせ衛星に搭載されたプラズマ波動・電場観測器(EFD/PWE)で計測された電場や低エネルギー電子分析器 (LEP-e)で計測された電子フラックスに様々な特徴が現れた。GSE座標系での観測電場のEz成分は、SARアークを横切った時間のみに約2.4 mV/m程度負に振れていて、この時間のGSE座標系での観測磁場データのBx成分は負であった。この結果からE×Bドリフトの向きは西向きになり、これは地上観測のSARアークの移動方向に一致した。またSARアークを横切ったとき、LEP-eで観測された100-eV以下の電子フラックスがその前後と比べて若干増大していた。講演では、これらの観測事実を、これまで提案されてきたSARアークの発生メカニズムに照らし合わせて議論する。