日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2019年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)、座長:江尻 省(国立極地研究所)、大塚 雄一

09:45 〜 10:00

[PEM16-04] 観測ロケットより超高層大気中に放出したTMAの観測画像を用いた電離圏中性風の解析

*大塚 祐樹1山本 真行1齊藤 大晶1 (1.高知工科大学)

キーワード:電離圏中性風、観測ロケット、トリメチルアルミニウム

1.研究背景・目的
 熱圏・電離圏における中性大気密度や電離大気密度などの高度プロファイルは、太陽活動や季節、昼夜の変化に伴い変動する。こうした変動は地上での通信、人工衛星との通信、またはその軌道に大きな影響を与える様々な現象を引き起こすが、詳しい発生メカニズムは分かっていない。本研究室ではこのメカニズムに重要な役割を果たしていると言われている、熱圏・電離圏おける中性大気風に関してJAXAやNASAとの共同実験・研究を行ってきた。
本研究では2013年7月にJAXAが実施した、夜間中緯度域でのロケット実験時に観測されたTMAの画像から、電離圏における中性風の風速を算出することを主目的とする。

2. ロケット実験概要
 2013年7月に中緯度電離圏に作用する電磁気的相互作用と電離・中性大気相互作用の全貌を明らかにすることを目的として、JAXAがロケット実験を実施した。内之浦宇宙空間観測所(USC)からS-310-42号機とS-520-27号機の計2機の観測ロケットが打ち上げられ、前者ではトリメチルアルミニウム(TMA)、後者からはリチウム(Li)が超高層大気中へと放出され、各観測地点及び航空機から、それらの発光雲の変化を光学観測し、図1に実験時の航空機の飛行経路、観測地点、TMA及びLiの放出領域等を示す[1]。

3. 風速算出方法
 風速の算出には、2013年7月のロケット実験で観測されたTMAの画像を用いる。各観測地点で観測された画像から、TMAが明瞭に写り、かつ長時間光学観測が実施された組み合わせとして、航空機からの画像(図2)とUSCでの画像(図3)を解析していく。
風速の算出は、横山(2011)と木原(2015)の方法を用いる。解析の順序に関しては、木原(2015)の方法を優先的に行い、解析データが出来次第、横山(2011)の方法を実施していく。

3.1 横山(2011)による方法[1]
観測された画像からTMAガスの中央位置を輝度情報から読み取り、TMAガスの中心軸を求める。 観測された画像に写っている星の中から1つを中心星としてその周りに10個程度の星を選択する。 星の画像上のX,Y座標、赤経、赤緯を用いて、中心星と周りの星との距離からレンズの歪曲補正を行う。 得られた中心軸の座標を天球座標に変換した後、観測地点情報を用いて地球座標に変換する。 上記の手順によって得られた各観測地点のデータから三角測量の方法を用いて風速を算出する。
3.2 木原(2015)による方法[2]
観測された画像からTMAガスの中央位置を輝度情報から読み取り、TMAガスの中心軸を求める。 カメラレンズの歪曲補正を行った後、画像上の座標を仰角、方位角へと変換する。 上記の補正を施した同地点の時間が異なった画像2枚の差分情報から風速を算出する。

 TMAガスの中心軸の抽出、星の抽出、仰角・方位角への変換、風速の概算を行ったがTMAガスの中心軸検出時の誤差や方位角・仰角変換に問題があり解決を急いでいる。今後はレンズの歪み、カメラの傾き、さらに航空機による撮影の場合は、航空機の揺れの補正も必要となる。本発表では、上記の誤差の修正・評価、補正を行い、改めて算出した結果を発表する予定である。

参考文献
[1]木原大城, “観測ロケットより超高層大気中に放出したリチウム共鳴散乱光の航空機観測と昼間熱圏中性風測定手法の開発”平成26年度高知工科大学大学院 特別研究報告,2015.

[2]横山雄生, “S-520-23号ロケット放出Liによる共鳴散乱光の多地点観測と熱圏中性風の高精度解析”平成20年度高知工科大学大学院 特別研究報告, 2009.