日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 大気圏・電離圏

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

[PEM16-P16] ハワイで得られた大気光画像中に見られる中間圏・電離圏波動の水平位相速度分布の統計解析

*内藤 豪人1塩川 和夫1大塚 雄一1坂野井 健2齊藤 昭則3中村 卓司4 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、3.京都大学大学院理学研究科地球物理学教室、4.国立極地研究所)

キーワード:大気重力波、中規模伝搬性電離圏擾乱、ハワイ

Matsuda et al. [JGR, 2014]は、3次元高速フーリエ変換を用いて画像中に見られる波のパワースペクトル密度の水平位相速度と伝搬方向の導出手法を提案した。Takeo et al. [JGR, 2017]やTsuchiya et al. [JGR, 2018]はこの手法を日本の信楽観測点や陸別観測点での観測に当てはめ、16年間の長期の大気波動の変動を明らかにした。しかし、この手法を赤道近くで得られた大気光画像の解析に用いた例はない。本研究では、信楽や陸別と緯度・経度・地形が大きく異なるハワイのハレアカラ観測点(20.7oN, 203.7oE)で2013年から2016年の3年間に得られた波長557.7 nmと630.0 nmの大気光画像にMatsuda et al. [JGR, 2014]の解析方法を適用し、この赤道近くの低緯度域での大気重力波とMSTIDの統計的な特徴を明らかにするとともに、Takeo et al. [JGR, 2017]やTsuchiya et al. [JGR, 2018]による信楽や陸別で見られた特徴との比較を行った。3年間の位相速度スペクトルの平均から、波長557.7 nmの大気光画像に見られた大気重力波は、伝搬方向に関しては、夏に真東と真西方向に伝搬する波が少なく、冬に南に伝搬する波が多かった。パワースペクトル密度に関しては、春と夏が強く、冬が弱かった。信楽や陸別では、夏に東、冬に西と伝搬方向が反対になることが分かっていたが、ハレアカラでは夏と冬の東西方向の伝搬に違いは見られなかった。これは中間圏ジェット気流のピーク近くの緯度に位置する陸別と信楽に対し、ハレアカラは中間圏ジェット気流のピークから離れた緯度に位置するため、中間圏ジェット気流によるウインドフィルタリング効果が陸別と信楽に比べて小さく、波の伝搬方向の制限をあまり受けなかったためだと考えられる。波長630.0 nmの大気光画像に見られたMSTIDの解析では、強いスペクトルを示す晩が4晩あり、これらの晩のスペクトルに平均スペクトルが大きく依存してしまうことがわかったため、スペクトルの強い晩のデータを取り除いて、季節ごとの平均水平位相速度スペクトルを計算した。スペクトルの強い日を除いた平均スペクトルは、夏に北西~南方向と北~南東方向が多く、秋は南東方向が多かった。パワースペクトル密度に関しては冬が最も強く、主に東西方向に波が伝搬していた。また春は全体的にパワースペクトル密度が弱かった。またハレアカラの結果を信楽と陸別の結果と比較すると、信楽と陸別では季節を問わず、南西方向の波が卓越する一方で、ハレアカラでは南西方向の波の卓越は見られなかった。また波のパワースペクトル密度の比較ではハレアカラのほうが弱かった。これはMSTIDに伴う分極電場が真夜中前では低緯度側に存在する赤道異常によって減衰するためであり、真夜中後でもMPB(Midnight Pressure Bulge)に関連すると思われる低緯度側から極向きに移動するMBW(Midnight Brightness Wave)によって減衰するためと考えられる。(Narayanan et al., JGR, 2014)