日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:梅田 隆行(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、中村 匡(福井県立大学)、座長:中村 匡(福井県立大学)、成行 泰裕

16:30 〜 16:45

[PEM17-11] 宇宙空間プラズマ中の near-field

*中村 匡1 (1.福井県立大学)

キーワード:プラズマ波動、ラプラス変換、近傍場

マックスウェル方程式の解は,電磁波として伝搬する成分とそれ以外の成分にわけることができる。クーロン場やダイポール磁場は後者の例である。この後者については用語等の混乱がみられるが,ここでは near-field と呼ぼう。この near-field については種々の誤解が散見される。たとえば,クーロン場による荷電粒子の相互作用を「仮想光子の交換」などと表現することがあるが,この相互作用は光子(波動成分)によるものではなく,ここで言う」 near-field によるものである。プラズマ波動に関しても,near-field の部分をどのようにあつかうかはあまり意識されていないように思われる。

数学的にはこの near-field は非同次線形方程式の特殊解のうち,波動分散関係をみたさない,いわゆる off shell の解に対応する。場がダイポール磁場のように時間変化しない場合はこれは簡単に伝搬成分と分離できるが,時間変化する場合にどう分離するか,というのが本講演の主眼である。通常,マックスウェル方程式を解く場合は,フーリエ・ラプラス変換して,方程式を代数方程式に落としこんで分散関係を得るが,この解をラプラス逆変換して時間の関数にもどすときに,留数定理を使って分散関係の極を拾っている。この極から来る成分を非同次線形方程式の特殊解から除くことによって,near-field 成分を抽出することができる。

秋の SGEPSS 講演会で,以上の状況を真空中の電磁場について報告したが,本講演では宇宙空間プラズマへの応用を考える。数学的にはプラズマ中でもnear-field は線形微分方程式の非斉次解ということに変わりはないが,物理的にはプラズマによって生じる電荷・電流によって多様な現象が生じる。とくにプラズマ波動は減少の時間・空間的スケールによって挙動がおおきく変わるので,多用な現象が起こる。本講演では宇宙空間プラズマへの応用として,小天体の周辺に生じる電流や高エネルギーオーロラ粒子の降下にともなうリターンカレントなどについて紹介する。