日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] 火星と火星圏の科学

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:宮本 英昭(東京大学)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、松岡 彩子(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)、Sushil K Atreya(University of Michigan Ann Arbor)

[PPS04-P09] 紫外線A・Cよる鉄カンラン石からの鉄溶出量の増加

*小森 信男1 (1.東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科)

キーワード:紫外線、鉄カンラン石、塩酸、鉄イオン、溶出量増加

私は「酸素の乏しい火星の表面には酸化鉄が多いのはなぜか」という謎を調査するために、中学校での生徒実験を指導している。A.S. Yen (1999)は,活性酸素種が火星の状況下で鉱物上で生じることを実験で示した。さらに、彼は空気中で鉄の薄膜に紫外線Cを照射放射 して、紫外線照射が 酸化物の生成率を上昇させることを示した。私の実験は、水中の鉄カンラン石に紫外線Cを照射すると鉄イオンの溶脱が促進されることを示したものであり、過去の火星と地球の活性酸素種以外の原因で、酸化鉄が紫外線によって発生する可能性があることを示している。
実験1
私は生徒に塩酸中に入れた鉄カンラン石に紫外線AとCを照射させた。この研究では福島県川俣町産の鉄カンラン石を使用した。この鉄カンラン石は整形されておらず約1gであり、pH2の塩酸を充填した試験管に入れた。80時間~100時間程紫外線を照射後、デジタルパックテストで水溶液中の鉄イオン濃度を確認した。この紫外線Aを用いた実験は7回行い、紫外線Cを用いた実験は3回行った。
紫外線Aを用いた実験の結果、紫外線を照射しない場合よりも7回中6回照射した場合の方が鉄溶出量が多くなった。紫外線Cでの実験結果は3回中3回同じ結果となった。ブラックライトにより発生する紫外線Aの波長のピークは365nmである。殺菌灯により発生する紫外線Cの波長のピークは245nmである。
実験2
鉄陰極銅陽極を塩酸に入れた電池に紫外線Aを照射させた。そして生徒は電池の発生電圧を測定し、紫外線照射と非照射の電圧を比較した。この紫外線を照射した電池では、電圧は常に0.2V以上であり150時間後に低下することはなかった。もう一方の紫外線を照射されていない電池の電圧は少しずつ低くなり、150時間後に電圧は0Vに近くなった。この実験は4回行った。すべての場合において、紫外線を照射した電池の電圧は照射していない電池よりも高かった。紫外線のエネルギーにより鉄原子から電子が解離し、鉄イオンが発生するように思われる。
考察
私の実験結果から、紫外線は鉄カンラン石と鉄からの鉄イオンの溶解を促進すると推定する。火星表面にはかつて水が存在していたと考えらており,そこに紫外線が照射されると岩石中の鉄の溶解が促進され,それが酸化鉄の起源の一つとなった可能性がある.