[PPS05-P09] 放射伝達を陽に考慮した金星大気大循環モデルで見られる東西平均構造
★招待講演
キーワード:金星、惑星大気、大気大循環モデル、放射伝達計算
金星大気の東西平均東西風は他の惑星大気にはない特徴を示している。ほぼすべての緯度において超回転状態にあり、スーパーローテーションと呼ばれる。数値計算や地上観測による数多くの研究がこの特徴を説明するべく試みられてきたが、2010年代になって遂に、Lebonnois et al. (2010) や Ikeda (2010) は、放射伝達を陽に計算することによりスーパーローテーションを表現することに成功した。これらは、放射過程をニュートン冷却によって代替えさせていたそれ以前の数値モデルとは一線を画すモデルである。
一方、我々は多様な惑星大気を包括的に扱うことのできる大気大循環モデルの開発を進めてきており、その一環として、今回、分厚いCO2大気を持つ大気のための大循環放射伝達計算を実現するパラメタを用意した。ここでは, 我々が決めた放射パラメタを金星大気の場合に応用してその大循環を計算し、放射伝達を陽に計算した先行研究との比較を行う。
我々が用いる大気大循環モデルは DCPAM (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/) である。DCPAMはプリミティブ方程式系を力学モデルとして用いており、これをスペクトル法によって解いている。物理過程としては放射過程、乱流混合過程を含み、地表面温度の計算においては地中熱伝導も計算する。放射パラメタは相関k-分布法を用いて導出、計算された放射フラックスは観測された放射フラックスとよく一致することを確認している。大気大循環計算においては、表面地形の有り無しの二種類の数値実験を行った。用いた分解能は T15L52, 格子点でいえば 48x24 であり、鉛直 52 層を有している。初期条件はどちらの実験も静止、温度分布は水平一様の VIRA 鉛直温度分布とした。金星の日変化は考慮したが、年変化は考慮していない(自転軸傾斜角はゼロ)。数値積分は 150000 地球日実行した。
100000地球日程度の積分によりエネルギーの時間変化で見るとほぼ統計的に平衡な状態に達する。この統計的な定常状態では , 地形有り無しどちらの実験でも、現実の金星大気東西風速強度の約半分、およそ 50 m/s 程度の超回転風速が雲層の中低緯度領域に見られた。
平均子午面循環は両半球にわたる大きな直接循環で構成されていた。地表面地形無し実験では、この子午面直接循環は、低緯度地表面付近に見られる逆循環を除き、地表面からモデルトップまで覆っていた。一方、地表面有り実験では雲層下部付近に逆循環が存在し、子午面循環は上下に分断される構造をなしていた。その他の逆循環としては、高緯度雲層付近の逆循環と、地形無し実験で見られた赤道域雲層以下の複数の高度領域に見らえる逆循環群である。
発表では、モデルで得られた東西平均構造と東西角運動流収支の解析結果を示す予定である。
一方、我々は多様な惑星大気を包括的に扱うことのできる大気大循環モデルの開発を進めてきており、その一環として、今回、分厚いCO2大気を持つ大気のための大循環放射伝達計算を実現するパラメタを用意した。ここでは, 我々が決めた放射パラメタを金星大気の場合に応用してその大循環を計算し、放射伝達を陽に計算した先行研究との比較を行う。
我々が用いる大気大循環モデルは DCPAM (http://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/) である。DCPAMはプリミティブ方程式系を力学モデルとして用いており、これをスペクトル法によって解いている。物理過程としては放射過程、乱流混合過程を含み、地表面温度の計算においては地中熱伝導も計算する。放射パラメタは相関k-分布法を用いて導出、計算された放射フラックスは観測された放射フラックスとよく一致することを確認している。大気大循環計算においては、表面地形の有り無しの二種類の数値実験を行った。用いた分解能は T15L52, 格子点でいえば 48x24 であり、鉛直 52 層を有している。初期条件はどちらの実験も静止、温度分布は水平一様の VIRA 鉛直温度分布とした。金星の日変化は考慮したが、年変化は考慮していない(自転軸傾斜角はゼロ)。数値積分は 150000 地球日実行した。
100000地球日程度の積分によりエネルギーの時間変化で見るとほぼ統計的に平衡な状態に達する。この統計的な定常状態では , 地形有り無しどちらの実験でも、現実の金星大気東西風速強度の約半分、およそ 50 m/s 程度の超回転風速が雲層の中低緯度領域に見られた。
平均子午面循環は両半球にわたる大きな直接循環で構成されていた。地表面地形無し実験では、この子午面直接循環は、低緯度地表面付近に見られる逆循環を除き、地表面からモデルトップまで覆っていた。一方、地表面有り実験では雲層下部付近に逆循環が存在し、子午面循環は上下に分断される構造をなしていた。その他の逆循環としては、高緯度雲層付近の逆循環と、地形無し実験で見られた赤道域雲層以下の複数の高度領域に見らえる逆循環群である。
発表では、モデルで得られた東西平均構造と東西角運動流収支の解析結果を示す予定である。