12:00 〜 12:15
[PPS06-12] M型星ハビタブルゾーン内の同期回転地球類似惑星における氷床形成
キーワード:同期回転惑星、大気大循環モデル、氷床、全球凍結状態、液体の水の存在
M型星近傍に存在する地球型惑星は同期回転状態にあると考えられている (Von Bloh et al, 2007)。これらの惑星のうち、鉛直1次元大気モデルによって定義されるハビタブルゾーン内に存在するものは、惑星表面上に液体の水を有すると期待されている。しかし、同期回転状態にある場合、固定された夜半球の存在により、温暖な昼半球から寒冷な夜半球に輸送された水蒸気が氷として固定され、惑星表面上から液体の水が失われてしまう可能性がある。Menou (2013)は、この問題について検討するため、水深50mの海を与えた同期回転惑星の設定で大気大循環モデル(GCM)実験を行い、降水量と蒸発量から惑星上に形成される氷床の厚さを見積もった。その結果、夜半球に形成される氷床量は、惑星表層の総水量に達する可能性があることを示した。しかしMenou (2013)では氷床厚を見積もるために地形無しの設定を用いたGCM実験の結果を使用している。氷床の成長に伴い地表面高度の分布は変化するので、大気循環は影響を受け降水分布・蒸発分布も変化するはずである。このため氷床の厚さはMenou (2013)により見積もられたものとは大きく変わってくる可能性がある。そこで本研究では、夜半球に形成される氷床による高度分布の変化の影響を調べるため、氷床形成によって生じると予想される高度分布を与えたGCM計算を行った。
用いたモデルはDCPAM5(https://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/) である。大気成分・惑星半径などの外部パラメータは地球と同じ値のものを用い、全球が常時水ないし氷で覆われた水惑星実験と、昼半球の初期水深に20cmを与え、表層水の流れは無視し、液体水の水平表層分布が大気輸送の結果決まる陸惑星実験を行った。地表面アルベドとして0.15の固定値を与えた。まず地形を無視した1500日の積分を実行し、降水量・蒸発量分布から表面に固定される水量と氷床底面における氷の融解量から夜半球に形成される氷床の厚さを診断する。次に、こうして得られた氷床の厚さ分布を表面高度として与えた1500日積分を実行し、氷床厚を再診断する。これを数回繰り返し、それ以上氷床の厚さが変化しない平衡状態を探った。その結果、陸惑星実験の場合には夜半球に標高4000mを超えるほぼ平衡状態に達した氷床が得られた。水惑星実験では、平衡状態が今回の逐次計算では得られず、途中経過として夜半球に標高1万mを超える氷床が形成された。この地形を与えた実験では、昼半球の表面温度も273Kを下回るようになり、全球凍結状態が発生の可能性が示唆された。これは高高度の夜半球から低高度の昼半球へ流れこむ冷気流によって昼半球の地表面が冷却しているためだと我々は考えている。本実験では氷によるアルベド上昇の効果は無視しているため、この結果は氷床地形に影響を受けた大気循環の効果により全球凍結状態が発生し得ることを示唆するものとなっている。
用いたモデルはDCPAM5(https://www.gfd-dennou.org/library/dcpam/) である。大気成分・惑星半径などの外部パラメータは地球と同じ値のものを用い、全球が常時水ないし氷で覆われた水惑星実験と、昼半球の初期水深に20cmを与え、表層水の流れは無視し、液体水の水平表層分布が大気輸送の結果決まる陸惑星実験を行った。地表面アルベドとして0.15の固定値を与えた。まず地形を無視した1500日の積分を実行し、降水量・蒸発量分布から表面に固定される水量と氷床底面における氷の融解量から夜半球に形成される氷床の厚さを診断する。次に、こうして得られた氷床の厚さ分布を表面高度として与えた1500日積分を実行し、氷床厚を再診断する。これを数回繰り返し、それ以上氷床の厚さが変化しない平衡状態を探った。その結果、陸惑星実験の場合には夜半球に標高4000mを超えるほぼ平衡状態に達した氷床が得られた。水惑星実験では、平衡状態が今回の逐次計算では得られず、途中経過として夜半球に標高1万mを超える氷床が形成された。この地形を与えた実験では、昼半球の表面温度も273Kを下回るようになり、全球凍結状態が発生の可能性が示唆された。これは高高度の夜半球から低高度の昼半球へ流れこむ冷気流によって昼半球の地表面が冷却しているためだと我々は考えている。本実験では氷によるアルベド上昇の効果は無視しているため、この結果は氷床地形に影響を受けた大気循環の効果により全球凍結状態が発生し得ることを示唆するものとなっている。