日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 A01 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、座長:黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科)、仲内 悠祐(JAXA/ISAS)

15:45 〜 16:00

[PPS06-20] 2018年ふたご座流星群に伴う月面衝突閃光の低分散スペクトル

*柳澤 正久1内田 有紀1栗原 誠弥1阿部 新助2布施 綾太2小野寺 圭祐3,4山田 竜平5 (1.電気通信大学情報理工学研究科、2.日本大学理工学部、3.総合研究大学院大学、4.宇宙科学研究所/宇宙航空研究開発機構、5.会津大学コンピュータ理工学部)

キーワード:月面衝突閃光、スペクトル、衝突

太陽系内の衝突では、実験室では再現の難しい10 km/sを越える速度で起こるものが多い。このような衝突では、これ以下の速度では起こらないシリケイトや鉄等の溶融、蒸発、プラズマ化が起こる。このような過程を伴う高速度衝突の理解は惑星科学にとって重要な課題であるが、実際にどのような現象が起こるのかはよく分かっていない。月面衝突閃光の観測からこの問題にアプローチすることができる。

月面衝突閃光の発生頻度や明るさ、その時間変化に関しては幾つかの研究結果が報告されている。しかしスペクトルに関する報告はわずかである。我々は、月震研究のための衝突閃光観測を試みるSAKURA日仏合同観測プロジェクトの一環として可視光用簡易スペクトルカメラ(図1)[1]による2018年12月のふたご座流星群に伴う月面衝突閃光の観測を行った。電気通信大学(東京都調布市)では、口径450 mm、焦点距離2015 mmのニュートン式反射望遠鏡および、口径280 mm、実効焦点距離920 mmのシュミットカセグレン式反射望遠鏡に取り付けたスペクトルカメラで観測を行い、日本大学(千葉県船橋市)では、口径400 mmの望遠鏡に取り付けた通常の動画カメラを主力として観測を行った。

12月15日晩(JST)に13個の閃光が電気通信大学から検出され、この内9個は日本大学でも同時検出された。同時検出されなかったものについては、観測装置の感度の違いや観測の一時的な中断などが考えられるが、詳細の調査は今後の課題である。13個の閃光をAからMと名付けた。その月面上での位置を図2に示す[2]。30分おきに行った比較星のスペクトル像を基準にして閃光のスペクトルを求めた[2, 3]。一例を図3に示す。ほとんどの閃光は約3000 Kの黒体放射スペクトルでよく近似できるが、そうでないものもあった。前者については衝突時に発生した融けた岩石の微小液滴からの黒体放射と考えれば説明がつきそうであるが、後者については発光メカニズムがよく分からない。宇宙ゴミによる太陽光の反射である可能性もある。



参考文献:[1] 柿沼文広,月面閃光観測用スペクトルカメラ,電気通信大学 修士論文 情報・通信工学専攻,2016,http://id.nii.ac.jp/1438/00008427/。[2] 内田有紀,月面閃光の低分散スペクトルⅠ,電気通信大学 修士論文 基盤理工学専攻,2018。[3] 栗原誠弥,月面閃光の低分散スペクトルⅡ,電気通信大学 修士論文 基盤理工学専攻,2018。