16:15 〜 16:30
[PPS06-22] 土星リング粒子を模擬した多孔質氷球の衝突過程に関する実験的研究
はじめに:土星のリングは、サイズが数mmから数mまでの水氷からなる粒子で構成されており、その粒子は数cm/s以下の相対速度で互いに衝突している。その相互衝突の結果、リング粒子は凝集・反発・破壊を起こし、その結果が土星リングの力学進化や構造に影響を及ぼしている。土星リングが非常に薄い円盤(厚さ100-200m以下)を保っているのは、土星リングを構成する水氷粒子が非弾性衝突を起こし、その結果、エネルギーを効果的に散逸しているためと考えられている。そのため、土星リングの起源や進化過程を明らかにするためには、リング粒子の衝突特性を調べる必要がある。特に、非弾性衝突を特徴付ける反発係数に対するリング粒子の構造や衝突速度の依存性が重要となる。
これまでの地上望遠鏡や惑星探査などの観測から、土星リング粒子の構造は、均質な氷、多孔質な氷(雪)、表面が霜で覆われた氷などが提案されている。先行研究では、均質な氷と表面が霜に覆われた氷の反発係数(ε)については調べられているが、多孔質な氷(雪)の反発係数については詳しく調べられていない。そこで本研究では、土星リング粒子の空隙率に着目し、反発係数と衝突速度の関係に対する空隙率の依存性を調べた。
実験方法:リング粒子の模擬物質には、表面をなめらかにした均質な氷球(空隙なし)と、空隙率を45、50、60%とした多孔質氷球を用いた。直径は3cmとした。これらの氷球を表面をなめらかにした氷板および花崗岩の板に自由落下させた。その際の落下速度は0.8cm/s〜280cm/s とした。板は球に比べて十分に大きいものを使用した。反発係数の測定は二つの方法で行った。一つ目は圧電素子を板に設置し、氷球が板に衝突する際に発生する弾性波を測定する方法である(AE法)。この方法では、氷球が板に衝突する度に弾性波が発生するため、その弾性波が発生する時間間隔を求めることができる。この時間間隔から衝突前後の球の速度変化を調べる。二つ目はレーザー変位計を用いて、自由落下させた氷球の高さ変化を測定する方法である。この方法もAE法と同様に、衝突の時間間隔から反発係数を計算した。
実験結果:氷球と氷板の衝突実験では、衝突速度が小さいと反発係数がε=0.9でほぼ一定となったが(準弾性領域)、ある速度を超えると衝突速度が大きくなるにつれ、反発係数は急激に低下した(非弾性領域)。2つの領域の境界速度である限界速度vcは24.5cm/s となった。また、非弾性領域では、先行研究で示された経験式ε=εqe(vi/vc)-log(v_i/v_c)(viは衝突速度,εqeは定数)を用いて整理することができた。一方、氷球と花崗岩板の実験でも、上記の氷板への衝突と同様の振る舞いを示したが、vc=11.2cm/sと約半分となった。
雪球の反発係数は花崗岩板・氷板ともに、衝突速度が大きくなるにつれて減少し続け、準弾性領域と非弾性領域の境界は確認できなかった。また、雪球の反発係数は空隙率が大きくなると全体的に下がるが、衝突速度が小さくなるにつれて収束することが分かった。これは空隙を潰すために運動エネルギーが使用されて、反発係数が小さくなるためと考えられる。この衝突速度と反発係数の関係は、ε=a・vi-b(a, bは定数)によって表されることがわかった。aの値は全ての場合で0.9-0.97であったが、bの値は花崗岩板でも氷板でも同様の空隙率依存性がみられた。
これまでの地上望遠鏡や惑星探査などの観測から、土星リング粒子の構造は、均質な氷、多孔質な氷(雪)、表面が霜で覆われた氷などが提案されている。先行研究では、均質な氷と表面が霜に覆われた氷の反発係数(ε)については調べられているが、多孔質な氷(雪)の反発係数については詳しく調べられていない。そこで本研究では、土星リング粒子の空隙率に着目し、反発係数と衝突速度の関係に対する空隙率の依存性を調べた。
実験方法:リング粒子の模擬物質には、表面をなめらかにした均質な氷球(空隙なし)と、空隙率を45、50、60%とした多孔質氷球を用いた。直径は3cmとした。これらの氷球を表面をなめらかにした氷板および花崗岩の板に自由落下させた。その際の落下速度は0.8cm/s〜280cm/s とした。板は球に比べて十分に大きいものを使用した。反発係数の測定は二つの方法で行った。一つ目は圧電素子を板に設置し、氷球が板に衝突する際に発生する弾性波を測定する方法である(AE法)。この方法では、氷球が板に衝突する度に弾性波が発生するため、その弾性波が発生する時間間隔を求めることができる。この時間間隔から衝突前後の球の速度変化を調べる。二つ目はレーザー変位計を用いて、自由落下させた氷球の高さ変化を測定する方法である。この方法もAE法と同様に、衝突の時間間隔から反発係数を計算した。
実験結果:氷球と氷板の衝突実験では、衝突速度が小さいと反発係数がε=0.9でほぼ一定となったが(準弾性領域)、ある速度を超えると衝突速度が大きくなるにつれ、反発係数は急激に低下した(非弾性領域)。2つの領域の境界速度である限界速度vcは24.5cm/s となった。また、非弾性領域では、先行研究で示された経験式ε=εqe(vi/vc)-log(v_i/v_c)(viは衝突速度,εqeは定数)を用いて整理することができた。一方、氷球と花崗岩板の実験でも、上記の氷板への衝突と同様の振る舞いを示したが、vc=11.2cm/sと約半分となった。
雪球の反発係数は花崗岩板・氷板ともに、衝突速度が大きくなるにつれて減少し続け、準弾性領域と非弾性領域の境界は確認できなかった。また、雪球の反発係数は空隙率が大きくなると全体的に下がるが、衝突速度が小さくなるにつれて収束することが分かった。これは空隙を潰すために運動エネルギーが使用されて、反発係数が小さくなるためと考えられる。この衝突速度と反発係数の関係は、ε=a・vi-b(a, bは定数)によって表されることがわかった。aの値は全ての場合で0.9-0.97であったが、bの値は花崗岩板でも氷板でも同様の空隙率依存性がみられた。