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[PPS06-30] 衝突による太陽系外起源小天体1I/’Oumuamuaの極端細長形状の形成条件
キーワード:1I/’Oumuamua、極端細長形状、小惑星衝突、数値計算、SPH法
1I/’Oumuamuaは2017年10月にPan-STARRS望遠鏡によって発見された, 太陽系外から来たと考えられている小天体である. この天体の軌道離心率は1.2であり, 無限遠での太陽との相対速度が26 km/s程度と太陽近傍星の相対速度に近い値であることから, 近傍の惑星系から飛来してきたと考えられている. 絶対等級は22等級程度であり, 0.04のアルベドを仮定することで100 m程度のサイズの小天体であると見積もられている. また最大で2.5等級程度の大きな光度変化を示しているため, 中間軸/長軸比が少なくとも0.3よりも小さいような極端に細長い形状をしていると考えられている.
我々は1I/’Oumuamuaの極端に細長い形状を小惑星衝突によって説明するため, 小惑星衝突の数値計算を様々な条件で行った. 数値計算には弾性体力学に拡張されたSmoothed Particle Hydrodynamics法に自己重力, 岩石の破壊モデル, 及び粉々になった岩石間の摩擦モデルを導入した計算コードを用いた. 衝突天体として始めから固体の引っ張り強度を持たず横ずれ応力が粉体の摩擦で決まるようなものを考え, ターゲット天体の直径は100 mで固定した. その上で衝突2天体の質量比, 粉体の摩擦角, 衝突角度, 衝突速度を様々に変化させた衝突計算を行い, 中間軸/長軸比が0.3を下回る極端細長形状を形成するような衝突条件を調べた.
衝突計算の結果, 大雑把には質量比0.5以上, 摩擦角40度以上, 衝突角度30度以下, 衝突速度40 cm/s以下という条件を満たす衝突のうちいくつかは中間軸/長軸比が0.3を下回る極端細長形状を形成することがわかった. これらの条件のうち, 実現が最も難しいものは衝突速度である. 現在の太陽系の小惑星帯での平均の衝突速度は約5 km/sであり, 要求される衝突速度よりはるかに速い速度である.
40 cm/s以下の衝突速度を実現するためには, 原始惑星系円盤の内部のような力学的に極めて冷たい環境が必要である. しかしながら原始惑星系円盤であっても乱流や大きな天体からの重力散乱などの要因で相対速度が上げられてしまう. そこで我々は低速度衝突を実現するために必要な乱流強度と大きな天体のサイズを見積もった. その結果, 乱流の強度を表すShakura-Sunyaevのアルファパラメータが10-4以下で, 周囲の大きな小天体のサイズが7 km以下ならば半径100 mの小天体間の相対速度が40 cm/s以下になることがわかった. この乱流の強度は磁気回転不安定性が成長しないような場所ならば実現可能である. 一方で7 km以下の小天体のサイズは極めて若い原始惑星系円盤でなければ実現することができない. したがって, 1I/’Oumuamuaは極めて若い原始惑星系円盤で形成され, その後巨大ガス惑星や恒星遭遇などによって惑星系から放出され, 太陽系までやって来た小天体であることが示唆された.
我々は1I/’Oumuamuaの極端に細長い形状を小惑星衝突によって説明するため, 小惑星衝突の数値計算を様々な条件で行った. 数値計算には弾性体力学に拡張されたSmoothed Particle Hydrodynamics法に自己重力, 岩石の破壊モデル, 及び粉々になった岩石間の摩擦モデルを導入した計算コードを用いた. 衝突天体として始めから固体の引っ張り強度を持たず横ずれ応力が粉体の摩擦で決まるようなものを考え, ターゲット天体の直径は100 mで固定した. その上で衝突2天体の質量比, 粉体の摩擦角, 衝突角度, 衝突速度を様々に変化させた衝突計算を行い, 中間軸/長軸比が0.3を下回る極端細長形状を形成するような衝突条件を調べた.
衝突計算の結果, 大雑把には質量比0.5以上, 摩擦角40度以上, 衝突角度30度以下, 衝突速度40 cm/s以下という条件を満たす衝突のうちいくつかは中間軸/長軸比が0.3を下回る極端細長形状を形成することがわかった. これらの条件のうち, 実現が最も難しいものは衝突速度である. 現在の太陽系の小惑星帯での平均の衝突速度は約5 km/sであり, 要求される衝突速度よりはるかに速い速度である.
40 cm/s以下の衝突速度を実現するためには, 原始惑星系円盤の内部のような力学的に極めて冷たい環境が必要である. しかしながら原始惑星系円盤であっても乱流や大きな天体からの重力散乱などの要因で相対速度が上げられてしまう. そこで我々は低速度衝突を実現するために必要な乱流強度と大きな天体のサイズを見積もった. その結果, 乱流の強度を表すShakura-Sunyaevのアルファパラメータが10-4以下で, 周囲の大きな小天体のサイズが7 km以下ならば半径100 mの小天体間の相対速度が40 cm/s以下になることがわかった. この乱流の強度は磁気回転不安定性が成長しないような場所ならば実現可能である. 一方で7 km以下の小天体のサイズは極めて若い原始惑星系円盤でなければ実現することができない. したがって, 1I/’Oumuamuaは極めて若い原始惑星系円盤で形成され, その後巨大ガス惑星や恒星遭遇などによって惑星系から放出され, 太陽系までやって来た小天体であることが示唆された.