日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 惑星科学

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:黒崎 健二(名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)

[PPS06-P13] ストリーミング不安定の発生機構の物理的解釈

*金子 寛明1 (1.東京工業大学)

キーワード:ストリーミング不安定、原始惑星系円盤、微惑星形成、流体力学、線形安定解析

惑星は、固体微粒子が集まって形成された大きさ数kmないし数十kmほどの微惑星という天体を経て形成されると考えられている。しかし,数十 cmサイズのダストは1 auの位置から100年ほどの極めて短いタイムスケールで中心星に落ちてしまう。このダストの落下問題によって微惑星形成は困難とされる中、Youdin & Goodman (2005)(YG05)が発見したダスト・ガスの二流体の線形不安定 “Streaming Instability” (SI) によるダスト密度上昇とそれに続く自己重力崩壊が微惑星形成の一つの可能性として考えられている。SIについては線形および非線形の数値計算がされていて不安定が存在することは確かであるものの、分散関係式が高次に及ぶこともありメカニズムは難解である。Jacquet, Balbus, & Latter (2011)(JBL11) はterminal velocity approximationを用いた連続の式の変形から、その解釈を試みている。その説明は次のようなものである。

1. ガスの高圧の部分にダストが溜められる。

2. ダストはガスを引きずって、この高圧の部分にガスを集める。

3. 高圧部の圧力がさらに強まり、不安定が成長する。高圧部では圧力勾配によってガスは分散しようとするが、コリオリ力とダストによるドラッグが地衡風平衡を保っている。


この説明では赤道平面内でメカニズムが完結しているが、 YG05では鉛直方向の移流のほうが半径方向よりも卓越していて、かつ、密度の極大に向かっているとあり、JBL11の説明には疑問が残る。

本研究ではYG05が用いているTerminal velocity approximationによって簡単化された分散関係式の解析を行い、ダスト密度やガス圧力、ダストの半径方向、鉛直方向の速度の揺らぎについて成長する波の成分の位相関係を計算する。これにより、JBL11とは異なり、鉛直方向の運動も考慮したSIのメカニズムの説明を考える。



本研究で得たSIのメカニズムは以下の通りである。

1. 基本場としてガスはダストから角運動量を受け取り、中心星より遠方へと運動する。ダスト密度に濃淡があると、ダスト密度の違いによってガスへの角運動量の供給に違いが生じ、半径方向にガス圧力の揺らぎができる。

2. 高圧部からは鉛直方向にガスが流出し、低圧部にはガスが流入する。ダストもこれに引きずられ、同様に高圧部から流出、低圧部に流入する。

3. ダスト密度の揺らぎの位相は中心星方向に進む。ダスト密度の極大はガスの低圧部へと向かい、そこで鉛直方向から流入するダストと合流し、ダスト密度の揺らぎの振幅が大きくなる。



この説明は,線形解析で得られる揺らぎの動きを全て矛盾なく捉えていることはもちろん,物理的にもわかりやすいものであると思われる。