16:15 〜 16:30
[PPS07-04] 隕石母天体での熱プロセスにおける鉱物と有機物の相互作用
キーワード:有機物の熱分解、隕石母天体、ケイ酸塩鉱物
背景と目的
炭素質コンドライトや他のいくらかの隕石は数wt%以下の微量な有機物を含んでいる。Pearson et al., 2002はこのような有機物が粘土鉱物と共存していることを示し、隕石母天体での有機物の水質変質に対して、粘土鉱物が及ぼす影響を議論した。しかしこれまで、こういった隕石母天体における鉱物と有機物の相互作用に関する議論は、鉱物と水や有機物と水の関係に比べて、あまりされてこなかった。本研究では、隕石母天体における熱による作用を模擬するために超臨界オートクレーブを用い、星間有機物アナログ物質(以降、MCと表記) (Kouchi et al., 2002) を特定の鉱物とともに加熱することで、1) 熱による有機物の変成が、共存する鉱物によってどのように影響を受けるか、2) これらの鉱物が有機物によって影響を受けるか、について調査した。
方法
MCはKouchi et al. (2002)に基づき、試薬を混合して作製した。実験の出発物質にはMCのみ (5 g)、MC (0.25 g)+ オリビン (0.25 g)、MC (0.25 g)+ モンモリロナイト (0.25 g)を用意した。サンプルをパイレックス製ガラス管に入れて、超臨界オートクレーブ装置に封入し、H2+N2 ガス(99:1, v/v)でパージを行った後、200 °C、300 °C、400 °C、1気圧で5時間の加熱を行った。自然放冷後のサンプルを回収し、FT-IR、GC/MS、XRD、SEM-EDSを用いた分析を行った。
結果と議論
MCの変成: 各温度における生成物の赤外分光分析によるCarbonyl C=Oの波数位置、強度変化と、GC/MSによって検出された、長鎖脂肪族を含む化合物の変化はよい一致を示した。出発物質に含まれる長鎖脂肪族を含む化合物はカルボン酸のみであるが、200 °Cではエステル化合物がメインとなり、300 °Cではエステル、アミド、ニトリル、400 °Cではアルカンとニトリルがメインとなった。また、400 °Cまでに単環の芳香族が増加した。カルボン酸は、同じく出発物質に含まれるアルコールやアミンと脱水縮合し、200 °C、300 ° Cにおいてエステル、アミドを形成し、400 °Cまでに熱クラッキングによるアルカンの生成とアミドのさらなる脱水によるニトリルの生成を遂げたと考えられる。また、400 °Cまでの高温下では出発物質中の架橋構造をもつ芳香族の熱クラッキングの進行で単環の芳香族種が増加したのだろう。
有機物の熱変成に対する鉱物の作用: Carbonyl C=Oの波数位置変化はMC + オリビンよりもMC + モンモリロナイトで顕著になり、300 °C、400 °Cでの加熱によって、C=O種が大きく減少した。オリビン、モンモリロナイトのacidityや比表面積の違いから、モンモリロナイトによる有機物の熱分解作用の促進が説明されるかもしれない。Alexander et al. (2007) では、熱を受けたCMコンドライトと普通コンドライト中の不溶性有機物 (IOM)で、O/CとH/Cの元素比がおよそ正の比例関係になっている。しかし、熱を受けたCMコンドライトの有機物のO/C比は、普通コンドライトの有機物のO/C比に比べて、あまり熱を受けていない隕石であっても、より小さな値を示している。熱を受けたCMコンドライトでは、熱を受ける前に存在した粘土鉱物が、共存する有機物の熱分解反応を促進したことで、低温下のO/C比の減少が生じた可能性がある。
鉱物の変成: 200 °Cまたは300 °Cにおける有機物との加熱によって、オリビンが部分的に含水化し、サーペンティン組成となっている可能性が見られた。加熱時の有機物の脱水に伴ってオリビンのサーペンティン化が進行している可能性がある。この結果は、隕石母天体中で水の存在がなくとも有機物によって、含水鉱物が形成されるうることを示している。現在、生成物のTEM分析によって、オリビンのサーペンティン化の確認を行っている。
炭素質コンドライトや他のいくらかの隕石は数wt%以下の微量な有機物を含んでいる。Pearson et al., 2002はこのような有機物が粘土鉱物と共存していることを示し、隕石母天体での有機物の水質変質に対して、粘土鉱物が及ぼす影響を議論した。しかしこれまで、こういった隕石母天体における鉱物と有機物の相互作用に関する議論は、鉱物と水や有機物と水の関係に比べて、あまりされてこなかった。本研究では、隕石母天体における熱による作用を模擬するために超臨界オートクレーブを用い、星間有機物アナログ物質(以降、MCと表記) (Kouchi et al., 2002) を特定の鉱物とともに加熱することで、1) 熱による有機物の変成が、共存する鉱物によってどのように影響を受けるか、2) これらの鉱物が有機物によって影響を受けるか、について調査した。
方法
MCはKouchi et al. (2002)に基づき、試薬を混合して作製した。実験の出発物質にはMCのみ (5 g)、MC (0.25 g)+ オリビン (0.25 g)、MC (0.25 g)+ モンモリロナイト (0.25 g)を用意した。サンプルをパイレックス製ガラス管に入れて、超臨界オートクレーブ装置に封入し、H2+N2 ガス(99:1, v/v)でパージを行った後、200 °C、300 °C、400 °C、1気圧で5時間の加熱を行った。自然放冷後のサンプルを回収し、FT-IR、GC/MS、XRD、SEM-EDSを用いた分析を行った。
結果と議論
MCの変成: 各温度における生成物の赤外分光分析によるCarbonyl C=Oの波数位置、強度変化と、GC/MSによって検出された、長鎖脂肪族を含む化合物の変化はよい一致を示した。出発物質に含まれる長鎖脂肪族を含む化合物はカルボン酸のみであるが、200 °Cではエステル化合物がメインとなり、300 °Cではエステル、アミド、ニトリル、400 °Cではアルカンとニトリルがメインとなった。また、400 °Cまでに単環の芳香族が増加した。カルボン酸は、同じく出発物質に含まれるアルコールやアミンと脱水縮合し、200 °C、300 ° Cにおいてエステル、アミドを形成し、400 °Cまでに熱クラッキングによるアルカンの生成とアミドのさらなる脱水によるニトリルの生成を遂げたと考えられる。また、400 °Cまでの高温下では出発物質中の架橋構造をもつ芳香族の熱クラッキングの進行で単環の芳香族種が増加したのだろう。
有機物の熱変成に対する鉱物の作用: Carbonyl C=Oの波数位置変化はMC + オリビンよりもMC + モンモリロナイトで顕著になり、300 °C、400 °Cでの加熱によって、C=O種が大きく減少した。オリビン、モンモリロナイトのacidityや比表面積の違いから、モンモリロナイトによる有機物の熱分解作用の促進が説明されるかもしれない。Alexander et al. (2007) では、熱を受けたCMコンドライトと普通コンドライト中の不溶性有機物 (IOM)で、O/CとH/Cの元素比がおよそ正の比例関係になっている。しかし、熱を受けたCMコンドライトの有機物のO/C比は、普通コンドライトの有機物のO/C比に比べて、あまり熱を受けていない隕石であっても、より小さな値を示している。熱を受けたCMコンドライトでは、熱を受ける前に存在した粘土鉱物が、共存する有機物の熱分解反応を促進したことで、低温下のO/C比の減少が生じた可能性がある。
鉱物の変成: 200 °Cまたは300 °Cにおける有機物との加熱によって、オリビンが部分的に含水化し、サーペンティン組成となっている可能性が見られた。加熱時の有機物の脱水に伴ってオリビンのサーペンティン化が進行している可能性がある。この結果は、隕石母天体中で水の存在がなくとも有機物によって、含水鉱物が形成されるうることを示している。現在、生成物のTEM分析によって、オリビンのサーペンティン化の確認を行っている。