日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、松本 恵(東北大学大学院)

[PPS07-P02] 隕石母天体中の水質変成過程におけるガンマ線によるアミノ酸の生成

*浅野 伸哉1依田 功2村松 康司3癸生川 陽子1小林 憲正1 (1.横浜国立大学、2.東京工業大学、3.兵庫県立大学)

[諸元]地球上における生命の誕生にはアミノ酸等の有機物が必要である。そのアミノ酸の供給源の一つとして、隕石などの地球外物質が考えられている。このような隕石の多くは小惑星を起源としているため、小惑星中の有機物の起源を考える必要がある。太陽系形成初期に、塵、氷、分子雲由来の低分子有機物を含む小惑星では、26Alの放射性崩壊による熱により氷が溶けて水質変質が起こった。隕石中に存在する複雑な高分子有機物(不溶性有機物)は、このような液体の水(0〜150℃程度)が存在する環境下で形成された可能性が指摘されている。この説を基に小惑星での水質変成を模擬した実験で、ホルムアルデヒド、アンモニア、水を加熱すると隕石有機物のような高分子有機物が形成されることがわかった。本研究では、水質変質過程において26Alの放射性崩壊により発生するガンマ線が有機物生成にどれだけ影響するか調べることを目的とした。
[実験方法]出発物質として体積が200μl、モル比が水:ホルムアルデヒド:アンモニア=100:5:5になるような混合物質をガラス管に加え、ガラス管内を真空にして封緘したものに東京工業大学の60Co線源を用いてガンマ線を照射した。照射条件は、3kGy/h×2.5h,3kGy×4h,3kGy/h×5h,1.5kGy/h×5h,1.5kGy/h×8h,1.5kGy/h×10hの6種類とした。比較のため同様の試料をオーブンで加熱(150℃、24h)した試料も作成した。照射後の試料はCaF2プレートに乗せて乾燥させたものを顕微FT-IR、金板に乗せて乾燥させたものを兵庫県立大学のX線吸収端近傍構造解析(XANES)で解析した。また、照射後の試料を酸加水分解(6 M塩酸、24h、110℃)したものを、陽イオン交換HPLCを用いてアミノ酸分析を行った。
[結果と考察]<陽イオン交換HPLC>
酸加水分解後の試料からグリシン、アラニン、β-アラニンなどの種々のアミノ酸が検出された。また、照射後の試料からは加熱試料に比べてアラニンが比較的多く生成していた。これは照射試料と加熱試料でアミノ酸の生成経路が異なることを示唆している。
[今後の展望]
今後の展望として照射条件(単位時間あたりのエネルギーと時間)を増やして、水質変成過程で26Alが放射性崩壊によって系に与えたエネルギーの概算値を用いて隕石母天体環境への外挿を行いたいと考えている。また、先行研究より複雑な高分子有機物が生成することがわかっているため、LC-MS等を用いた分析を行いたい。
[参考文献]
[1] G.D.Cody et al.,PNAS,108,19171-19176 (2011).
[2] Y.Kebukawa et al.,Astrophysical J., 771, 19 (2013)