日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] 月の科学と探査

2019年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 103 (1F)

コンビーナ:長岡 央(宇宙航空研究開発機構)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、座長:橋爪 光長岡 央

11:30 〜 11:45

[PPS08-10] 月面揮発性物質学 - これまでと、これから

*橋爪 光1 (1.茨城大学理学部)

キーワード:月探査、同位体組成、揮発性物質

月面に人類が始めて降り立って以来長らく、月は、その表面も、天体そのものも、完全に無水の天体であると考えられてきた。ところが、ここ十年余りにおいて、その認識の急転換を迫る重要な発見が相次いだ。月面にも、月岩石圏にも水が発見されたのである。本講演では、まず、月面において最近発見された水を始めとした揮発性物質の観測を概観し、その起源やそれぞれの量、更には、月面における揮発性物質の挙動について手短に紹介する。最終的に、月面揮発性物質の科学は今後どのように進むべきか、以下の2項目について、議論をしたい。(1)宇宙物質サンプラーとしての月面:月面は、月地殻形成以来、太陽や様々な太陽系天体を起源とする様々な物質の降着履歴を記録しているかもしれない。この履歴が解読できれば、月ー地球軌道を横切る物質フラックス、また、その経年変化が解明できるかもしれない。どのように読み取れば、それが解読でき、それに対して現在どのような課題に直面しているのか?将来の探査において、その課題は克服できるだろうか?(2)月面水の挙動:月面の水は、地球の水とは異なる起源を持つ可能性がある。地球の水が、おそらくは、二次大気、つまり、地球に集積した惑星形成材料物質から脱ガスした成分、であるのに対して、月面の水は、月面に供給された様々な起源の揮発性元素から、月面において合成された可能性が高い。このことは、月面における揮発性元素の挙動を正確に解明しないと、月の水を正しく理解出来ない事を意味する。月面のどこで、どのようなエネルギーで揮発性元素が供給され、その後、月面でどのように挙動・反応し水が作られるのか?この一連の過程を理解するには、今後どのような取り組みが必要だろうか?今後の複数の月探査において、系統的に進めるべき長期的課題を整理するきっかけとするための議論を展開する。