[SCG48-P42] 加速度計記録を用いたS-netのセンサー姿勢・方位推定と地殻変動検出可能性の検討
キーワード:S-net、センサー方位、地殻変動、スロースリップ、傾斜観測
防災科学技術研究所による日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の整備により、東北日本前弧海域下の地球内部構造やプレート境界地震およびプレート境界で発生するスロー地震の理解が飛躍的に進展することが期待される。本研究では、S-net加速度計観測記録に基づき、様々な解析を行う上で必要となるセンサーの姿勢と方位の推定を行うとともに、加速度計によるスロースリップなどによる地殻変動の検出可能性を検討した。
本研究では、センサーの姿勢(ケーブル長軸回りの回転、ケーブル長軸方向の傾斜)と方位(ケーブル長軸の方位)を別々に推定した。姿勢は、加速度計のDC成分が重力加速度を記録していることを利用した。強震動による回転角の変化を除けば、2016年8月から2018年12月までの期間内における傾斜角・回転角の変化は0.01-0.1度程度であった。なお、1度以上の回転があったのは、2016年8月20日三陸沖(M6.4)と2016年11月20日福島県沖地震(M7.4)のみである。方位は、遠地地震(M7.0-8.2、7-14個)の周期30-100秒のレイリー波振動軌跡を使って推定した。センサー方位推定の信頼区間は、±5-10度程度であった。得られた姿勢・方位を用いて波形を回転させた結果、三成分において長周期波形の位相が揃うこと、ラブ波とレイリー波が分離することが確認できた。
加速度計のDC成分からセンサーの姿勢を推定できるため、加速度計記録から地殻変動が検出される可能性が示唆される。そのため、センサーの傾斜角・回転角を1時間毎に推定し、傾斜角・回転角の時系列を作成した。その結果、地震などよるオフセットを含まない期間における傾斜角・回転角のばらつきは、多くの観測点で2マイクロラジアン程度であった。ただし、水深1500 m以浅の埋設観測点ではばらつきが小さく、0.2マイクロラジアン程度であった。ばらつきが小さい観測点では、潮汐応答と思われる1マイクロラジアン程度の変化が観測されるものもあった。例えば、房総スロースリップイベントによる陸域での最大傾斜変動量は1マイクロラジアン程度である。時定数などさらに検討が必要ではあるが、ばらつきの小さい埋設観測点では、同サイズのイベントに伴う傾斜を観測できる可能性があるかもしれない。また、スタッキングによりS/N比を向上させるなどにより、地殻変動を検出できる可能性も残っている。
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のS-netの連続地震波形データを用いた。観測点の設置および維持にかかわって来られた皆様に感謝いたします。
本研究では、センサーの姿勢(ケーブル長軸回りの回転、ケーブル長軸方向の傾斜)と方位(ケーブル長軸の方位)を別々に推定した。姿勢は、加速度計のDC成分が重力加速度を記録していることを利用した。強震動による回転角の変化を除けば、2016年8月から2018年12月までの期間内における傾斜角・回転角の変化は0.01-0.1度程度であった。なお、1度以上の回転があったのは、2016年8月20日三陸沖(M6.4)と2016年11月20日福島県沖地震(M7.4)のみである。方位は、遠地地震(M7.0-8.2、7-14個)の周期30-100秒のレイリー波振動軌跡を使って推定した。センサー方位推定の信頼区間は、±5-10度程度であった。得られた姿勢・方位を用いて波形を回転させた結果、三成分において長周期波形の位相が揃うこと、ラブ波とレイリー波が分離することが確認できた。
加速度計のDC成分からセンサーの姿勢を推定できるため、加速度計記録から地殻変動が検出される可能性が示唆される。そのため、センサーの傾斜角・回転角を1時間毎に推定し、傾斜角・回転角の時系列を作成した。その結果、地震などよるオフセットを含まない期間における傾斜角・回転角のばらつきは、多くの観測点で2マイクロラジアン程度であった。ただし、水深1500 m以浅の埋設観測点ではばらつきが小さく、0.2マイクロラジアン程度であった。ばらつきが小さい観測点では、潮汐応答と思われる1マイクロラジアン程度の変化が観測されるものもあった。例えば、房総スロースリップイベントによる陸域での最大傾斜変動量は1マイクロラジアン程度である。時定数などさらに検討が必要ではあるが、ばらつきの小さい埋設観測点では、同サイズのイベントに伴う傾斜を観測できる可能性があるかもしれない。また、スタッキングによりS/N比を向上させるなどにより、地殻変動を検出できる可能性も残っている。
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のS-netの連続地震波形データを用いた。観測点の設置および維持にかかわって来られた皆様に感謝いたします。