[SCG49-P13] 静岡県西部三波川帯 "渋川超苦鉄質岩体" カンラン石の構造岩石学的研究
キーワード:三波川帯、御荷鉾帯、集積岩、超苦鉄質岩、カンラン石ファブリック、ダナイト
三波川帯は西南日本を代表する変成帯である.四国山地ではこの20年間,三波川帯中の超苦鉄質岩体について多くの研究がなされ,岩体の起源は沈み込み帯のマントルウェッジであることが明らかとなった.一方で他の地域の三波川帯超苦鉄質岩体の起源は不明であるため,今回静岡県西部の超苦鉄質岩体について初生鉱物であるカンラン石に注目して構造岩石学的研究を行い,岩体の起源を明らかにすることにした.なお,この岩体は命名されていないため,本研究では便宜上 "渋川超苦鉄質岩体" と命名した.渋川超苦鉄質岩体は蛇紋岩化が進行しているが,カンラン石やスピネル,そしてわずかに単斜輝石が残留していた.このことから,岩体はダナイトとウェールライトから構成されていることが分かった.走査型電子顕微鏡(SEM)による結晶方位解析より,カンラン石の結晶方位定向配列(CPO)パターンはDタイプと単集中のタイプにわけられることが分かった.CPOの集中度は相対的に北部で高いものの,南部では相対的に低い傾向を示した.カンラン石粒径の頻度分布も考慮すると,これは岩体の南部は動的再結晶に伴う細粒化の途中であった一方,北部では細粒化が完了していたと考えられる.カンラン石のCPOパターンと,カンラン石とスピネルの主要元素組成は,この岩体の起源が四国山地三波川帯超苦鉄質岩体とは異なることを示唆している.さらに,これらの結果と岩相よりこの岩体の起源は御荷鉾帯で報告されている集積岩と考えられる.