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[SCG52-04] 新燃岳2011年噴火噴出物における石基輝石結晶の晶相に対する結晶サイズ分布
キーワード:結晶サイズ分布、晶相、輝石、火山
噴火様式の変化のプロセスを明らかにするためには、マグマ混合のような、火山内部でのマグマの挙動の解明が重要となる。新燃岳2011年噴火は、一連の噴火の中で噴火様式が変化したことが特徴的であり、噴火以前からマグマ混合が起きていたとされる(e.g., Suzuki et al., 2013)。しかしながら、火山内部の詳細な様子は未だ不明な部分が多く、マグマだまりから火口までの比較的浅い部分でのマグマ上昇過程についての情報が必要とされる。結晶サイズ分布(Crystal Size Distribution: CSD)は結晶化に影響するカイネティックな物理的プロセスを反映するとされており(Marsh, 1988)、Mujin and Nakamura (2014) やMujin et al. (2017) では、新燃岳2011年噴火における石基結晶のCSDが調べられた。その結果、CSDにはキンクがあり、傾きが緩やかな粗粒側と急な細粒側に分類されることが分かり、噴火様式による火道浅部での物理化学的環境の違いを反映している可能性が示唆された。本研究では石基輝石結晶に着目し、マグマの火道上昇時の環境についての詳細な情報を得ようと試みた。
サンプルは新燃岳2011年噴火におけるサブプリニー式噴火とブルカノ式噴火の、二種類の灰色軽石を用いた。SPring-8 BL47XUで放射光による高分解能X線CT撮影と、電子後方散乱回折法(EBSD)(HKL CHANNEL5, Oxford Instruments)により、石基輝石結晶の外形と結晶面を調べた。さらに電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-7001F, JEOL)を用いて石基輝石結晶の粒径・形状分析を行い、それらの微細組織を透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM-2100F, JEOL)により観察し、走査型透過電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分析(STEM-EDS)(JET-2300T, JEOL)を行った。
石基輝石結晶のSEM観察の結果、サンプル中の多くの粒子が6角形か8角形の晶相であることが分かった。X線CTとEBSDの結果、ほとんどの粒子がc軸に沿って柱状に伸びており、6角形では{010}面と{110}面が、8角形では追加で{100}面が発達していることが示された。粒径・形状分析の結果、サブプリニー式噴火の軽石では6角形の粒子が8角形のものよりも多く存在し、一方ブルカノ式では8角形が顕著であり、6角形はごく少数であることが分かった。両噴火様式において、晶相による粒径分布の違いに着目すると、6角形は8角形よりも細粒側に分布していた。またCSDの傾きも晶相によって異なっており、6角形のほうが急であることが分かった。さらにTEM観察の結果、こうした石基中の輝石粒子はOpxの両側に{100}面でCpxが接合した構造をもち、両側のCpxが互いに双晶関係の結晶方位である場合があることが明らかになった。さらに微細組織がc軸と平行に対称に分布しており、同心状に広がっていることが示唆された。
6角形と8角形の粒径分布やCSDの傾きは、Mujin and Nakamura (2014) における細粒側と粗粒側のグループにそれぞれ対応していることが分かった。Marsh (1988) は、CSDにおける近似直線の傾きは成長速度と停滞時間の積の指標であるとしている。停滞時間が6角形と8角形でほぼ同じだった場合、8角形がより成長速度が速いと仮定すると、得られたCSDの特徴と整合的である。しかしながら、同じ環境で異なる晶相が混在することは考えにくい。一方、成長速度が両者でほぼ同じと仮定した場合、CSDの傾きから停滞時間を見積もった結果、地球物理学的観測データ(Kozono et al., 2013, Sato et al., 2013)から推測される火道上昇時間と近い値を持つことが分かった。特に、サブプリニー式の6角形の推定停滞時間がその上昇時間に近く、比較的速い上昇速度を反映していると考えられ、石基輝石粒子の晶相は上昇速度を反映する可能性が示唆される。さらにその微細組織が内部環境の時間変化を記録している可能性が示されたことから、石基輝石粒子は火山内部のマグマの挙動解明に貢献し得ると考えられる。
サンプルは新燃岳2011年噴火におけるサブプリニー式噴火とブルカノ式噴火の、二種類の灰色軽石を用いた。SPring-8 BL47XUで放射光による高分解能X線CT撮影と、電子後方散乱回折法(EBSD)(HKL CHANNEL5, Oxford Instruments)により、石基輝石結晶の外形と結晶面を調べた。さらに電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-7001F, JEOL)を用いて石基輝石結晶の粒径・形状分析を行い、それらの微細組織を透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM-2100F, JEOL)により観察し、走査型透過電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分析(STEM-EDS)(JET-2300T, JEOL)を行った。
石基輝石結晶のSEM観察の結果、サンプル中の多くの粒子が6角形か8角形の晶相であることが分かった。X線CTとEBSDの結果、ほとんどの粒子がc軸に沿って柱状に伸びており、6角形では{010}面と{110}面が、8角形では追加で{100}面が発達していることが示された。粒径・形状分析の結果、サブプリニー式噴火の軽石では6角形の粒子が8角形のものよりも多く存在し、一方ブルカノ式では8角形が顕著であり、6角形はごく少数であることが分かった。両噴火様式において、晶相による粒径分布の違いに着目すると、6角形は8角形よりも細粒側に分布していた。またCSDの傾きも晶相によって異なっており、6角形のほうが急であることが分かった。さらにTEM観察の結果、こうした石基中の輝石粒子はOpxの両側に{100}面でCpxが接合した構造をもち、両側のCpxが互いに双晶関係の結晶方位である場合があることが明らかになった。さらに微細組織がc軸と平行に対称に分布しており、同心状に広がっていることが示唆された。
6角形と8角形の粒径分布やCSDの傾きは、Mujin and Nakamura (2014) における細粒側と粗粒側のグループにそれぞれ対応していることが分かった。Marsh (1988) は、CSDにおける近似直線の傾きは成長速度と停滞時間の積の指標であるとしている。停滞時間が6角形と8角形でほぼ同じだった場合、8角形がより成長速度が速いと仮定すると、得られたCSDの特徴と整合的である。しかしながら、同じ環境で異なる晶相が混在することは考えにくい。一方、成長速度が両者でほぼ同じと仮定した場合、CSDの傾きから停滞時間を見積もった結果、地球物理学的観測データ(Kozono et al., 2013, Sato et al., 2013)から推測される火道上昇時間と近い値を持つことが分かった。特に、サブプリニー式の6角形の推定停滞時間がその上昇時間に近く、比較的速い上昇速度を反映していると考えられ、石基輝石粒子の晶相は上昇速度を反映する可能性が示唆される。さらにその微細組織が内部環境の時間変化を記録している可能性が示されたことから、石基輝石粒子は火山内部のマグマの挙動解明に貢献し得ると考えられる。