日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] 活断層による環境形成・維持

2019年5月30日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、山野 誠(東京大学地震研究所)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、濱元 栄起(埼玉県環境科学国際センター)

[SCG53-P01] 琵琶湖湖底における熱流量測定

*濱元 栄起1山野 誠2 (1.埼玉県環境科学国際センター、2.東京大学地震研究所)

キーワード:熱流量、琵琶湖、水温変動

琵琶湖の湖底には断層が存在していると考えられ、その周辺において水とガスの湧出が観察されている。熱流量は、このような流体の湧出を調べるひとつの手掛かりになる。これまでの先行調査では琵琶湖の2地点で熱流量が測定されている。ひとつは湖底の掘削孔で50 mW/m2、もうひとつは湖岸に位置する掘削孔で44 mW/m2である。周辺地域での測定値も考慮すると、琵琶湖地域における流体流動による影響のないバックグラウンド熱流量値は50 mW/m2程度と推定される。
我々は、2010年に滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの調査船(当時)「はっけん号」を使って、琵琶湖北西部の最深部付近の5地点で熱流量測定を行った。この測定には深海底で通常用いられる熱流量プローブを使用した。プローブの長さは1.5及び3.0 mで、7個のセンサーが取り付けられている。琵琶湖の最大水深は約100 mであり、湖底水温の変動が大きいことが知られている。そのため湖底から数mの地下温度も湖底の水温変動による擾乱を受けていることになる。実際、プローブによって測定された温度プロファイルは、いずれも水温変動によって明らかに乱されたものであった。このうち、ガス湧出が観察された近くの1点で測定した温度プロファイルは、極めて高い温度勾配(~300 mK/m)を示した。これは、水温変動の影響を考えに入れても、明らかに異常に高い値である。流体の流れは移流による熱流の異常を引き起こすことから、我々はこの高い値は堆積物中の上昇流によるものと解釈している。しかし、水深が浅く水温変動が大きい場所においては、深海用の熱流量プローブによる測定では信頼性に限界がある。信頼性の高い熱流量値を得るためには、長期温度モニタリングを実施し、水温変動の影響を考慮した解析を行うことが有用である。さらに長期温度データの解析により、流体の流速も推定することが可能である。今後、琵琶湖湖底の断層に関連する流体の流れを解明していくには、信頼性の高い熱流量測定を高密度で行うことが必要と考えられる。