日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG54] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:田阪 美樹(島根大学)、桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、座長:田阪 美樹(島根大学 )、石橋 秀巳(静岡大学)

13:45 〜 14:00

[SCG54-07] 寒候期に不安定化する地すべりの動態を規制するスメクタイトの摩擦特性

★招待講演

*柴崎 達也1松浦 純生2 (1.国土防災技術株式会社、2.京都大学防災研究所)

キーワード:地すべり、スメクタイト、残留強度、温度依存

日本国内では,特に新第三紀の堆積岩地帯や火山体周辺の熱水変質岩地帯において,スメクタイトを含む地層で地すべりが頻繁に発生している。大変位を受け残留せん断状態にあるスメクタイトに富む粘土は摩擦係数が小さく,これを滑材とする地すべりは非常に緩やかな斜面でも安定を損ないやすい。また,その移動速度は0.01~0.1 mm/min前後での観測例が統計的にも多く,毎年同じような時期に緩慢な移動を繰り返す特性がある。地すべり多発地帯として知られる新潟県内で発生した地すべりの動態観測によると,寒候期に多様な運動パターンを示すことが明らかとなっている。晩秋期や積雪初期から移動を開始するものや,厳冬期に移動を開始するもの,融雪期に移動するものがあるが,このような多様な運動パターンを規定する要因がよくわかっていない。そこで筆者らは,浅い小規模な地すべりほど晩秋から積雪初期に移動を開始する事例が多いことに注目し,地すべり面を含む不撹乱試料を用いた繰り返し一面せん断試験や,再構成した粘土を用いたリングせん断試験により,粘土の残留強度の温度依存特性を検証した。その結果,スメクタイトに富む粘土は,0.1 mm/min以下の低速条件において,低温環境ほど摩擦抵抗が低下する特性があることが判明した。つまり,寒候期に緩慢な地すべり移動を生じる要因として,間隙水圧の変動以外に季節的な地温変動が関与している可能性が示唆される。せん断速度によって温度依存特性が変化する要因としては,せん断面におけるスメクタイト粒子の配向状態が関与しているものと考察している。

参考文献
1) Shibasaki T., Matsuura S., and Okamoto T. (2016): Experimental evidence for shallow, slow-moving landslides activated by a decrease in ground temperature. Geophysical Research Letters, 43, 13, 6975-6984. doi.org/10.1002/2016GL069604
2) Shibasaki T., Matsuura S., and Hasegawa Y. (2017): Temperature-dependent residual shear strength characteristics of smectite-bearing landslide soils. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 122, 2, 1449-1469. doi.org/10.1002/2016JB013241