日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG54] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:田阪 美樹(島根大学)、桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻)、座長:田阪 美樹(島根大学 )、石橋 秀巳(静岡大学)

14:15 〜 14:30

[SCG54-09] かんらん岩とはんれい岩の脆性変形に伴う地震波速度の変化

*赤松 祐哉1片山 郁夫1 (1.広島大学)

キーワード:かんらん岩、はんれい岩、地震波速度、脆性変形、ダイラタンシー、マイクロクラック

モホ面は地震波速度の不連続で定義され,一般的には地殻とマントルの物質境界と解釈される.海洋地殻は中央海嶺のマグマシステムによって連続的に生成されるため,モホ面での地震波速度の不連続や反射面は海洋プレート内で一様に観測されることが期待される.しかし,近年の海底下の地震波探査では,モホ面での地震波の反射強度に地域性があることが報告されている(例えば,Mutter and Carton, 2013; Ohira et al., 2018).地震波速度はマイクロクラックの存在に大きく影響を受けるため,それらの地震波速度異常にマイクロクラックが寄与している可能性がある.脆性変形中のかんらん岩は苦鉄質岩に比べて著しく小さい非弾性体積膨張(ダイラタンシー)を示すことが,三軸圧縮試験における歪み測定から明らかになっている(Akamatsu et al., 2019).このダイラタンシーの違いは,脆性変形中の地震波速度の変化が地殻とマントルで異なることを示唆しており,モホ面での地震波速度異常を引き起こしている可能性がある.そこで本研究は,かんらん岩とはんれい岩の変形中の地震波速度を測定し,脆性変形が地震波速度と反射強度に与える影響について考察した.

 試料にはオマーンオフィオライトのはんれい岩と幌満かんらん岩を用い,三軸変形試験中に地震波速度の測定を行った.実験は広島大学の容器内透水変形試験機を用いて,室温,歪み速度~10-6 s-1,封圧20 MPaの条件で行った.その際,圧縮軸に垂直な方向を透過する弾性波(P波・S波)を測定し,試料幅とパルス透過法で得られた走時から地震波速度を算出した.なお,S波は圧縮軸に平行に振動するSH波と,垂直に振動するSV波の2種類を測定した.

 はんれい岩は破壊に近づくにつれVp,Vsともに大きく低下した(Vp: ~40%, Vs: ~30%).また,地震波速度から求めたクラック密度は,圧縮軸に平行なマイクロクラックが卓越していることを示した.これらの結果は,苦鉄質岩の歪み測定と破壊後の微細組織観察と整合的である(Akamatsu et al., 2019).一方かんらん岩の Vp,Vs の低下ははんれい岩に比べて小さく(<20%),圧縮軸に平行なクラック密度もはんれい岩に比べて著しく小さい値を示した.この結果は,脆性変形中のかんらん岩で形成されるマイクロクラックが主に剪断性(モードII)のクラックであることを示唆しており,歪みと微細組織観察の結果とも整合的である.これらのかんらん岩とはんれい岩の脆性変形に伴う地震波速度とクラック密度の変化の違いは,モホ面での地震波速度の不連続と反射強度に影響を与えている可能性があり,海洋プレート内のモホ面の多様性に寄与していると考えられる.