15:00 〜 15:15
[SCG54-12] 六方最密構造(hcp)鉄のレオロジー
キーワード:hcp鉄、内核、レオロジー
地球中心に位置する固体金属の内核には、南北方向に伝播するP波が赤道方向のものに対し約3%も高速となる大きな地震波異方性が存在することがわかっている。この内核の異方性の成因には、さまざまなメカニズムが提唱されているが、現在までに一致した見解は得られていない。Lasbleis and Deguen (2015) によれば、内核の年齢(内核冷却速度の逆数に相当)と粘性率の値によって内核ダイナミクスの支配的なメカニズムが異り、異方的成長(Yoshida et al., 1996)、熱対流 (Jealoz and Wenk, 1988) をはじめとするいくつものメカニズムが可能性を持つとされる。しかしながら、内核年齢と粘性率はよく制約されていないため、いずれのメカニズムも現在の内核ダイナミクスの支配的メカニズムである可能性を持っている。内核の粘性率は内核を構成する六方最密構造(hcp)鉄の流動変形の力学的性質(レオロジー)によって決まっていると考えられるため、hcp鉄の高温高圧でのレオロジーの理解が重要である。本研究では、内核異方性形成メカニズムに制約を与えることを目的として、高温高圧変形実験によってhcp鉄のレオロジーの決定を目指した。
実験は高エネルギー加速器研究機構、PF-AR、NE7A設置のD111型変形装置 およびSPring-8、BL04B1設置のD-DIA装置SPEED-MkII-Dを用いて行った。直径0.5 mm、高さ0.5-0.6 mmに成型したbcc鉄焼結多結晶体を用いて、一定歪速度における高温高圧変形実験を行なった。変形の条件はT = 423–873 K、P = 16.9–22.6 GPa、一軸圧縮歪速度0.2–5.2×10–5 s–1である。実験中の試料の差応力は60 keVの放射光単色X線を用いた2次元X線回折により、歪はX線ラジオグラフィーにより決定した。
実験の結果、約700K以上の高温では、5に近い応力指数の値が得られた。これは純金属のべき乗則クリープで一般的な値である。いっぽうで、より低温ではべき乗則の崩壊 (power-law breakdown) が起こり、流動応力はほとんど歪速度に依存せず、また温度依存性も非常に小さかった。融点規格化に基づいた予察的な見積もりによると、内核条件でのhcp鉄の粘性率は1021 Pa s以上の高い値を持つことが示唆される。
実験は高エネルギー加速器研究機構、PF-AR、NE7A設置のD111型変形装置 およびSPring-8、BL04B1設置のD-DIA装置SPEED-MkII-Dを用いて行った。直径0.5 mm、高さ0.5-0.6 mmに成型したbcc鉄焼結多結晶体を用いて、一定歪速度における高温高圧変形実験を行なった。変形の条件はT = 423–873 K、P = 16.9–22.6 GPa、一軸圧縮歪速度0.2–5.2×10–5 s–1である。実験中の試料の差応力は60 keVの放射光単色X線を用いた2次元X線回折により、歪はX線ラジオグラフィーにより決定した。
実験の結果、約700K以上の高温では、5に近い応力指数の値が得られた。これは純金属のべき乗則クリープで一般的な値である。いっぽうで、より低温ではべき乗則の崩壊 (power-law breakdown) が起こり、流動応力はほとんど歪速度に依存せず、また温度依存性も非常に小さかった。融点規格化に基づいた予察的な見積もりによると、内核条件でのhcp鉄の粘性率は1021 Pa s以上の高い値を持つことが示唆される。