日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 海洋底地球科学

2019年5月26日(日) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:戸塚 修平三澤 文慶

09:15 〜 09:30

[SCG56-02] 沖縄トラフごんどうサイトの海底下から得られた熱水性堆積物の鉱物学的・地球化学的特徴

*戸塚 修平1石橋 純一郎2島田 和彦2池端 慶3町山 栄章4飯島 耕一4山本 浩文4熊谷 英憲4池原 研5山崎 徹5高谷 雄太郎6長瀬 敏郎7Tindell Thomas8米津 幸太郎8多田 祐輝8 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3.筑波大学生命環境系、4.海洋研究開発機構海底資源研究開発センター、5.産業技術総合研究所、6.早稲田大学創造理工学部環境資源工学科、7.東北大学総合学術博物館、8.九州大学工学府地球資源システム工学専攻)

キーワード:海底熱水鉱床、背弧海盆

ごんどうサイトは中部沖縄トラフ第三久米海丘の西麓に位置する熱水活動域である.Minami and Ohara (2017)によれば,熱水性チムニー・マウンドが集積したと考えられる地形が水深1330-1470 mの1400 m×400 mにわたる範囲に広がっていることが認められている.またIshikawa et al. (2016)によって,この海域から採取された熱水性鉱石が黄銅鉱に富んでいることが報告されている.これらの調査結果を受けて,2017年10~11月にSIP統合海洋資源調査システムJM17-04調査航海がJ-MARES(次世代海洋資源調査技術研究組合)によって実施され,ごんどうサイトのSouthern areaに当たる海域で海底設置型掘削装置を用いた掘削調査が行われた.本講演では,この掘削調査で得られた堆積物コア中に含まれていた硫化鉱物について,反射顕微鏡を用いた観察,X線回折による鉱物同定,EPMAを用いた鉱物化学組成分析などを行った解析結果を中心に報告する.
 硫化鉱物が最も多く含まれていたSite GDUC06から得られた堆積物は,海底面より順に泥質堆積物,塊状〜鉱染状硫化物,珪化岩からなっていた.上部の塊状硫化鉱は黒色を呈しており,主に閃亜鉛鉱,黄鉄鉱,方鉛鉱,重晶石から構成されている.これに対して下部の塊状硫化鉱は黄色を呈しており,主に黄鉄鉱,黄銅鉱,石英から構成されており,粘土鉱物も多く含んでいる.また珪化岩中の硫化鉱物としては黄鉄鉱が認められた.沖縄トラフで実施された熱水域海底下の掘削調査で,黒鉱鉱床の黒鉱と黄鉱に対比できる特徴をもった硫化物を含む層がそれぞれ数 m程度の厚みをもって見られたのは初めての例になる.
 硫化鉱物の化学組成についても,黒鉱鉱床から報告されている値と比較できる値が得られた.閃亜鉛鉱のFe含有量は0.22-5.72 atm%であり,花岡鉱山の0.07-0.35 atm% (Shimazaki and Horikoshi, 1990)と近い.塊状硫化物層の上部で見られた四面銅鉱はいずれもTennantite端成分に近い大きなAs/(As+Sb)比を示し,またZn/Fe比も高かった.これらの硫化鉱物の化学組成は,鉱物生成時の化学環境を反映すると考えられており,今後の詳細な比較検討を進めたい.

謝辞
本研究は,内閣府総合科学技術・イノベーション会議によるSIP課題「次世代海洋資源調査技術」の一環として実施されたものです.本研究に用いた堆積物コア試料を提供いただいたJ-MARES(次世代海洋資源調査技術研究組合)に感謝します.