日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 海洋底地球科学

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG56-P16] 南鳥島レアアース泥の鉱物組成および粒度分布:超高濃度レアアース泥の生成機構への示唆

*酒井 巧1田中 えりか1安川 和孝1,2大田 隼一郎2,1藤永 公一郎2,1中村 謙太郎1加藤 泰浩3,1,2 (1.東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻、2.千葉工業大学次世代海洋資源研究センター、3.東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター)

キーワード:レアアース泥、粒度分布、鉱物組成、化学層序、深海堆積物

2011年,レアアース (rare-earth elements and yttrium, REY) を濃集した深海堆積物「レアアース泥」が太平洋の広域に分布しており,新規レアアース資源となる可能性が示された [1].さらに,南鳥島周辺の排他的経済水域 (南鳥島EEZ) 内で,総レアアース濃度 (ΣREY) が5,000 ppmを超える「超高濃度レアアース泥」が発見され [2],その詳細な空間分布の把握をはじめとする様々な研究が進められてきた [3].しかしながら,その生成機構はいまだ完全には明らかになっていない.

 近年,南鳥島EEZ内で採取された堆積物コア49本の多元素組成データを基に,同海域内の深海堆積物が特徴的な化学組成をもつ9つの堆積層に分類できることが示された [4].この「化学層序」に基づき,ΣREY濃度が2,000 ppmを超える「ΣREYピーク」は3層存在することが明らかになった [4]. このうち,第1 ΣREYピークに相当する超高濃度レアアース泥については,鉱物組成および粒度分析から,ΣREY濃度が最大となる層準において生物源リン酸カルシウム (biogenic calcium phosphate; BCP) と十字沸石 (phillipsite) の粒度が他の層準よりも粗くなることが明らかになっている [5].しかし,これがすべてのピーク層で普遍的な特徴であるのかは不明である.また,各化学層序ユニットと鉱物組成・粒度分布の対応は,未だ系統的に検討されていない.

 そこで本研究では,各化学層序ユニットの鉱物組成および粒度分布の特徴を明らかにし,超高濃度レアアース泥の生成機構について制約を与えることを目的とした.そのために,南鳥島EEZ内で採取された17本の堆積物コアから,全化学層序ユニットをカバーするように全80試料を選定し,スミアスライド観察による鉱物組成分析およびレーザー回折・散乱式粒度分析計を用いた粒度分析を行った.その結果,各化学層序ユニット間での系統的な鉱物組成・粒度分布の違いが明らかになるとともに,すべてのΣREYピーク層でBCPおよびphillpsiteの粒度が粗くなることが確認された.このことは,強い底層流による粒度分別効果が,複数の超高濃度レアアース泥層の生成に共通して関与したことを示唆している.



Reference

[1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience, 4, 535–539.

[2] Iijima et al. (2016) Geochemical Journal, 50, 557–573.

[3] Takaya et al. (2018) Scientific Reports, 8, 5763.

[4] Tanaka et al. Submitted to Ore Geology Reviews.

[5] Ohta et al. (2016) Geochemical Journal, 50, 591–603.