日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 日本列島の構造と進化: 島弧の形成から巨大地震サイクルまで

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)、松原 誠(防災科学技術研究所)

[SCG57-P06] 2018年大阪府北部の地震および2018年北海道胆振東部地震地域の地震発生層深さ

*YANO Tomoko Elizabeth1松原 誠1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:地震発生層、大阪府北部、北海道胆振東部、地震、地殻熱流量

背景:
活断層周辺の地震発生層を理解することは、その断層上で起こり得る地殻内地震の最大規模を予測する上で重要である。地震発生層の深さはまた、地殻のレオロジーにも関連するため、脆性領域の深さも示している。D95 (あるグリッド内で発生した地震を地表から数えた個数が全地震の95%となるまでの深さ) は、過去の微小地震活動から求めることができる。この研究の目的は、D95が地震発生層の深部限界を示す指標となっているかどうかを検証することであり、2018年大阪府北部の地震と2018年北海道胆振東部地震が発生する前の段階で、本震前の微小地震活動から地震発生層の下限を予測できたかどうかを調べた。

データ・手法:
D95は各本震前の地震活動から計算される。本研究ではDD法により震源再決定されたJUICEカタログ(2001-2012)のイベントカタログを使用した。 JUICEカタログに掲載されているM1.5以上のイベントから、0.02°間隔の格子点ごとにD95を計算した。格子点から0.1°の範囲内にあるイベントの総数が50個以上となる格子のみを対象とした。

また、地下の温度データから推定された摂氏250度、300度、および450度の深度と地震の深さとの対応を確認した。地表から深さ約300 mまで、および深さ約1000 mまでの温度プロファイルを含むデータセットを使用して、地殻内温度が250、300、450度に達する深さ(D250deg、D300deg、D450deg) を計算した。

結果:
2018年大阪府北部の地震では、再決定された本震の震源は深さ13.7 kmであるのに対し、再決定した余震は主に深さ8〜14 kmに分布する。余震域のD95は深さ13 kmから14 kmの間と計算された。 また、D250degからD450degまでの範囲は深さ10 kmから24 kmであり、 D300degは約13kmだった。

2018年北海道胆振東部地震では、本震の再決定震源の深さは35.9 kmであるのに対し、再決定された余震は、主に深さ25〜50 kmの範囲に分布する。 D95はおよそ25 kmと推定され、D250degからD400degまでの範囲は深さ10 kmから34 kmと推定された。

議論・結論:
2018年大阪府北部の地震については、D95を地震発生層の下限とすることと、本震と余震の分布に矛盾はなかった。一方で、2018年北海道胆振東部地震のD95は、実際の震源分布と整合していない。D95は本震よりも約10 km浅く、最も深い余震に比べ約25 km浅かった。本研究では、本震の西側に位置する石狩低地東縁断層帯の地震活動を用いてD95を算出した。そのため、このD95は石狩低地東縁断層帯の地震発生層の下限を示したものであり、2018年北海道胆振東部地震の断層そのものを反映したものではないことが、本震-余震の分布とD95における矛盾の原因と考えられる。