14:15 〜 14:30
[SCG59-03] データ同化に基づく地中地震記録を用いた地表地震動の予測(2)
キーワード:緊急地震速報、データ同化
はじめに
地震動の即時予測の高度化を目指し, 観測データをシミュレーションに取り込むデータ同化を用いた手法が, 地震波動場の予測( Hoshiba et al. 2015)や津波の予測(Maeda et al. 2015)のため提唱されている. Hoshiba et al (2015)では, 震度の分布を面的に予測するために輻射伝達方程式を使用している. 一方, Maeda et al (2015)では津波予測に波動方程式を使用している. 最近, 古村・他(2018地震学会)では長周期の地震波動場予測に波動方程式を使用している. しかし, もう少しの短周期の地震波の場合には, 観測点密度や計算時間等の制約のためであろうが, まだ波動方程式は使用されていないようである. そこで我々は, KiK-netなどの鉛直ボアホールを対象に問題を1次元に制約し,地震動予測に向けた波動方程式に基づくデータ同化に関する取り組みを開始した(石原・中原, 2018 地震学会). 地中地震記録から地表地震記録を迅速かつ高精度で再現可能ならば, 地表地震記録のみを用いる場合より, 警報を出す時間を早められるだろう. 本研究は, 直下型地震に対するオンサイト型の緊急地震速報の高度化に向けた基礎研究と位置づけられる.
データ・手法
本研究では, 防災科学技術研究所のKiK-net観測網の中でCHBH10(千葉)を利用した. この観測点では地表と深さ2000mに強震計が設置されている. 千葉県周辺で発生したM5以上の地震60個に対して解析を行った. シミュレーションには, 水平成層構造における平面波の斜め入射を差分法で効率的に解くことが出来る田中・竹中(2004)の手法を用いた. 地中記録のP波初動部分1秒間の波形から粒子軌跡を描き, 地震波の到来方向と入射角を計算した. 速度検層による地震波速度構造に対して, 方位角・入射角の結果と地中記録を用いて, 波動方程式の差分計算により地中から地表面にかけての波動場のシミュレーションを行い, 地表の観測波形と計算波形とを比較した.
結果・考察
石原・中原 (2018 地震学会)では本解析における二つの問題点を明らかにした. 一つ目は, 時間の経過に伴い再現が悪くなる事である. これは, 地中において観測波形(上昇波+下降波)と計算波形(下降波)が一致しない時に発生する, 人工的な上昇波の生成の影響である. もう一つの大きな問題が, 入射角の大きいイベント程再現が悪くなる事である. これは, 地中観測点にP波部分の観測値(速度振幅)を入力する際に, 応力の情報が無い為に人工的なSV波が発生してしまうからである.
今回, 我々はこの影響を評価する為に, P波入力を想定した速度波形(応力は0)を用いた時に発生するSV波の振幅を計算した. 入射角は0°〜45°まで1°刻みで変化させた。その結果, 人工的なSV波はP波最大振幅との振幅比で, 入射角10°で約4%, 20°で約10%, 30°で約25%, 45°で50%発生する事が分かった. 加えて, 上記の影響を減らすために, 仮想的な応力条件や地中観測点を追加し再解析を行い, それらを評価した.
今後, Haskell法で計算された理論的な波動場と比較を行う予定である。また、上記の問題点を解決し予測精度を向上させる為に, 地中観測点配置の最適化や適切な応力条件の設定方法を考えていく.
地震動の即時予測の高度化を目指し, 観測データをシミュレーションに取り込むデータ同化を用いた手法が, 地震波動場の予測( Hoshiba et al. 2015)や津波の予測(Maeda et al. 2015)のため提唱されている. Hoshiba et al (2015)では, 震度の分布を面的に予測するために輻射伝達方程式を使用している. 一方, Maeda et al (2015)では津波予測に波動方程式を使用している. 最近, 古村・他(2018地震学会)では長周期の地震波動場予測に波動方程式を使用している. しかし, もう少しの短周期の地震波の場合には, 観測点密度や計算時間等の制約のためであろうが, まだ波動方程式は使用されていないようである. そこで我々は, KiK-netなどの鉛直ボアホールを対象に問題を1次元に制約し,地震動予測に向けた波動方程式に基づくデータ同化に関する取り組みを開始した(石原・中原, 2018 地震学会). 地中地震記録から地表地震記録を迅速かつ高精度で再現可能ならば, 地表地震記録のみを用いる場合より, 警報を出す時間を早められるだろう. 本研究は, 直下型地震に対するオンサイト型の緊急地震速報の高度化に向けた基礎研究と位置づけられる.
データ・手法
本研究では, 防災科学技術研究所のKiK-net観測網の中でCHBH10(千葉)を利用した. この観測点では地表と深さ2000mに強震計が設置されている. 千葉県周辺で発生したM5以上の地震60個に対して解析を行った. シミュレーションには, 水平成層構造における平面波の斜め入射を差分法で効率的に解くことが出来る田中・竹中(2004)の手法を用いた. 地中記録のP波初動部分1秒間の波形から粒子軌跡を描き, 地震波の到来方向と入射角を計算した. 速度検層による地震波速度構造に対して, 方位角・入射角の結果と地中記録を用いて, 波動方程式の差分計算により地中から地表面にかけての波動場のシミュレーションを行い, 地表の観測波形と計算波形とを比較した.
結果・考察
石原・中原 (2018 地震学会)では本解析における二つの問題点を明らかにした. 一つ目は, 時間の経過に伴い再現が悪くなる事である. これは, 地中において観測波形(上昇波+下降波)と計算波形(下降波)が一致しない時に発生する, 人工的な上昇波の生成の影響である. もう一つの大きな問題が, 入射角の大きいイベント程再現が悪くなる事である. これは, 地中観測点にP波部分の観測値(速度振幅)を入力する際に, 応力の情報が無い為に人工的なSV波が発生してしまうからである.
今回, 我々はこの影響を評価する為に, P波入力を想定した速度波形(応力は0)を用いた時に発生するSV波の振幅を計算した. 入射角は0°〜45°まで1°刻みで変化させた。その結果, 人工的なSV波はP波最大振幅との振幅比で, 入射角10°で約4%, 20°で約10%, 30°で約25%, 45°で50%発生する事が分かった. 加えて, 上記の影響を減らすために, 仮想的な応力条件や地中観測点を追加し再解析を行い, それらを評価した.
今後, Haskell法で計算された理論的な波動場と比較を行う予定である。また、上記の問題点を解決し予測精度を向上させる為に, 地中観測点配置の最適化や適切な応力条件の設定方法を考えていく.