14:30 〜 14:45
[SCG59-04] 長周期地震動の即時予測システムの開発及び実証実験
★招待講演
キーワード:長周期地震動、即時予測、緊急地震速報、実証実験
地震の発生そのものを予知することは現状の技術では困難であるが、地震観測網や情報技術、通信環境の発展により、地震発生直後にその情報を迅速に伝えることは可能となってきた。鉄道においては1990年前後から新幹線の早期地震検知警報システムが実用化されたほか、全国規模の予報・警報としては気象庁による緊急地震速報の運用が2007年から始まるなど、地震動の即時予測情報は社会的に重要な役割を果たしている。
一方、緊急地震速報の発表指標は震度のみであり、長周期地震動などより広帯域の地震動情報への対応はなされていない。大地震に伴って発生する長周期地震動は、高層ビル等を大きくかつ長く揺らし、室内の家具の転倒・移動やエレベータの損傷等の被害をもたらす。気象庁では、震度では表すことのできない長周期地震動へ対応するため、周期1.6~7.8秒の間の絶対速度応答スペクトル(減衰定数5%)の最大値にもとづく長周期地震動階級を定め、地震直後にその階級を発表している。Dhakal et al. [2015]は、K-NET及びKiK-netで観測された36地震・12,401の強震記録を用いて、固有周期1-10秒、減衰定数5%の絶対速度応答に関する予測式を開発した。この予測式はJ-SHIS(Japan Seismic Hazard Information Station)の深部地盤構造モデルにおけるS波速度1.4km/s層の上面深さを用いて地点毎に補正することで精度高い予測を可能としている。また、この予測式はモーメントマグニチュードMwではなく、地震直後に入手可能な気象庁マグニチュードMjを用いていることも大きな特徴である。我々は、この予測式と緊急地震速報により与えられる震源位置と地震規模を用いた長周期地震動の即時予測システムを開発した。
気象庁では近い将来に、緊急地震速報と同様な予報・警報を長周期地震動に関しても出すことを計画しており、長周期地震動に関する情報検討会多様なニーズに対応する予測情報検討ワーキンググループを設置して検討を進めてきた。気象業務法における予報業務を行う場合には気象庁の許可が必要なため、防災科研は気象庁と連携し、将来の予報業務許可事業者としての役割を防災科研が担うことで長周期地震動に関する予測情報を試験的に配信し、その効果及び利活用方法の検証、課題の抽出・整理等を行うことに加え、長周期地震動の理解促進、長周期地震動階級の周知等を目指した実証実験を行っている。実証実験は大きく2種類から成っており、1つは「機械処理可能な予測結果を利用した実験」で、もう1つは「予測結果の分布図を利用した実験」である。
本講演では、長周期地震動の即時予測システムや、APIや長周期地震動モニタを用いたユーザーへの観測及び即時予測情報の配信に関する実証実験の内容やその成果について紹介するとともに、今後の展望について述べる。
一方、緊急地震速報の発表指標は震度のみであり、長周期地震動などより広帯域の地震動情報への対応はなされていない。大地震に伴って発生する長周期地震動は、高層ビル等を大きくかつ長く揺らし、室内の家具の転倒・移動やエレベータの損傷等の被害をもたらす。気象庁では、震度では表すことのできない長周期地震動へ対応するため、周期1.6~7.8秒の間の絶対速度応答スペクトル(減衰定数5%)の最大値にもとづく長周期地震動階級を定め、地震直後にその階級を発表している。Dhakal et al. [2015]は、K-NET及びKiK-netで観測された36地震・12,401の強震記録を用いて、固有周期1-10秒、減衰定数5%の絶対速度応答に関する予測式を開発した。この予測式はJ-SHIS(Japan Seismic Hazard Information Station)の深部地盤構造モデルにおけるS波速度1.4km/s層の上面深さを用いて地点毎に補正することで精度高い予測を可能としている。また、この予測式はモーメントマグニチュードMwではなく、地震直後に入手可能な気象庁マグニチュードMjを用いていることも大きな特徴である。我々は、この予測式と緊急地震速報により与えられる震源位置と地震規模を用いた長周期地震動の即時予測システムを開発した。
気象庁では近い将来に、緊急地震速報と同様な予報・警報を長周期地震動に関しても出すことを計画しており、長周期地震動に関する情報検討会多様なニーズに対応する予測情報検討ワーキンググループを設置して検討を進めてきた。気象業務法における予報業務を行う場合には気象庁の許可が必要なため、防災科研は気象庁と連携し、将来の予報業務許可事業者としての役割を防災科研が担うことで長周期地震動に関する予測情報を試験的に配信し、その効果及び利活用方法の検証、課題の抽出・整理等を行うことに加え、長周期地震動の理解促進、長周期地震動階級の周知等を目指した実証実験を行っている。実証実験は大きく2種類から成っており、1つは「機械処理可能な予測結果を利用した実験」で、もう1つは「予測結果の分布図を利用した実験」である。
本講演では、長周期地震動の即時予測システムや、APIや長周期地震動モニタを用いたユーザーへの観測及び即時予測情報の配信に関する実証実験の内容やその成果について紹介するとともに、今後の展望について述べる。