[SCG59-P03] 海底水圧変動データを使ったマグニチュード推定の試み
キーワード:DONET、マグニチュード、水圧計、早期地震警報
大地震の発生が予想されている海溝やトラフ域周辺において、DONETやS-netをはじめとする海底リアルタイム地震観測網が整備されたことにより、海域で発生した地震のシグナル検知時間の短縮や検出限界の向上、震源決定等各種解析の精度向上が確認されている(Nakano et al., 2013)。一方、海底に設置した強震計の応答の非線形性や、強震計自体の回転・傾斜の影響によると考えられるシグナルがデータに混在することがあり、このようなシグナルは海底における地震動成分を解析する上で誤差要因となりうる。2016年4月1日に三重県南東沖で発生した中規模地震(Mjma 6.5)時のDONETの強震計データでは、距離減衰式から予想される値と比べて短周期の変位振幅が最大43倍増幅している上、海底観測点間の振幅のばらつきが陸上観測点間と比べて約2倍大きいことが示されている(Nakamura et al., 2018)。地震時の顕著な増幅や増幅のばらつきは、震源からの放射特性や構造の影響だけでは説明が難しく、応答の非線形性もしくは回転・傾斜の影響を起因とする、震源近傍の複数の強震計データに混入していた加速度オフセットのシグナルがその主因と考えられる。強震時のこのようなシグナルの混入は、マグニチュード評価や断層震源解析等の過大評価や結果の不安定性を招く。そこで本研究では、DONETの強震計(Metrozet社TSA-100S)に代わり、強震計の近くに設置されている水圧計(Paroscientific社8B7000-2)データの振幅解析を試み、強震計データの場合との比較評価から、水圧計データに基づくマグニチュード解析の可能性について検証を行った。
解析では、緊急地震速報や気象庁一元化震源リストの振幅マグニチュード計算で使用されている、変位周期6秒以下の帯域に着目した。近年、水圧計データから地震動成分を解析した研究が発表されており(例えば、Kubota et al., 2017)、周期帯によっては、水圧変動と上下方向の地震動が理論・観測の両面で一致する結果が示されている(Chao et al., 2017; Saito, 2017)。海底観測点の設置水深2,200 mの場合、周期6秒以下の帯域の水圧変動成分は、地動速度の上下動成分と対応しており(例えば、松本・他, 2012)、本研究では水圧波形を一回積分し、6秒のハイパスフィルターを適用することで、マグニチュード計算のための地動変位に相当する成分に変換した。変換後の波形の最大振幅値とマグニチュードを関係づける重回帰式を構築後、各イベントデータについてマグニチュードを推定した。
解析の結果、水圧計データの短周期振幅から推定した値は、気象庁一元化震源リストのマグニチュードと良く相関していることが分かった。推定値について、震源リストのマグニチュードに対する偏差(2σ)は0.70となり、強震計の3成分合成振幅値を使用した場合の偏差0.70と比べ、同等の結果となった。また、強震計で大きな加速度オフセットが見られた2016年4月1日三重県南東沖の地震(Mjma 6.5)時のデータについて、強震計の3成分合成振幅値を使用したマグニチュードは震源近傍のDONET1観測点で6.64–8.34の値であった一方、水圧計データを使ったマグニチュードは6.33–6.81となり、増幅が抑えられていることに加え、安定的な値であることも分かった。変位の短周期成分において、強震計と比べて水圧計は、強震時の応答の非線形性や回転・傾斜の影響が相対的に小さい可能性があり、水圧計の振幅データを活用することで、マグニチュードの安定的な推定につながるかもしれない。
解析では、緊急地震速報や気象庁一元化震源リストの振幅マグニチュード計算で使用されている、変位周期6秒以下の帯域に着目した。近年、水圧計データから地震動成分を解析した研究が発表されており(例えば、Kubota et al., 2017)、周期帯によっては、水圧変動と上下方向の地震動が理論・観測の両面で一致する結果が示されている(Chao et al., 2017; Saito, 2017)。海底観測点の設置水深2,200 mの場合、周期6秒以下の帯域の水圧変動成分は、地動速度の上下動成分と対応しており(例えば、松本・他, 2012)、本研究では水圧波形を一回積分し、6秒のハイパスフィルターを適用することで、マグニチュード計算のための地動変位に相当する成分に変換した。変換後の波形の最大振幅値とマグニチュードを関係づける重回帰式を構築後、各イベントデータについてマグニチュードを推定した。
解析の結果、水圧計データの短周期振幅から推定した値は、気象庁一元化震源リストのマグニチュードと良く相関していることが分かった。推定値について、震源リストのマグニチュードに対する偏差(2σ)は0.70となり、強震計の3成分合成振幅値を使用した場合の偏差0.70と比べ、同等の結果となった。また、強震計で大きな加速度オフセットが見られた2016年4月1日三重県南東沖の地震(Mjma 6.5)時のデータについて、強震計の3成分合成振幅値を使用したマグニチュードは震源近傍のDONET1観測点で6.64–8.34の値であった一方、水圧計データを使ったマグニチュードは6.33–6.81となり、増幅が抑えられていることに加え、安定的な値であることも分かった。変位の短周期成分において、強震計と比べて水圧計は、強震時の応答の非線形性や回転・傾斜の影響が相対的に小さい可能性があり、水圧計の振幅データを活用することで、マグニチュードの安定的な推定につながるかもしれない。