14:00 〜 14:15
[SCG60-08] アウターライズ地震津波の津波高予測における計算パラメタの依存性
キーワード:アウターライズ地震、津波、数値計算
巨大な海溝型地震が発生すると,海溝軸より海側でプレートのベンディングにともなうアウターライズ地震がしばしば発生する.2011年東北地方太平洋沖地震の対となるM8クラスのアウターライズ地震は未だ発生しておらず,その発生が予想される.津波の即時予測にはDB検索型システムが一般的だが,DB検索型システムで津波の予測精度を担保するためには,多種多様な地震シナリオを不足なくDBに取り込む必要がある.しかし,実はこれが難しく,DBに格納する断層の深さは何キロ間隔で設定すべきかなどの問いに対して,我々は明確な答えを持ち合わせていない.そこでまず本研究では,アウターライズ地震津波に対する断層パラメタ等の感度解析を行った.
地殻構造探査や海底観測の結果を参照して,日本海溝アウターライズ地震の9つの基本モデルを設定した.各基本モデルは長さ20km程度の複数の小断層で構成され,小断層の上端深さは全て海底下0.1km,傾斜は60°,すべり角は270°とした.地形や構造探査に基づいて走向を与えた.アウターライズ地震のスケーリング則(Álvarez-Gómez et al., 2012)を使って,全断層長(L)からMwをもとめた.断層幅(W)は地震発生層の下端に達するまでは L/W=1 で与えることとしたが,地震発生層の厚さ35kmでは9つの基本モデル全てで下端に達した.すべり量は断層面積とMwから求めた.半無限均質弾性体媒質を仮定して地殻変動を計算し(Okada, 1985),斜面の水平移動による津波励起の効果(Tanioka and Satake, 1996)と,水理フィルタ(Kajiura, 1963)を考慮した上で津波の初期水位分布とした.津波計算は非線形浅水波式を差分法で解くことによって行い,東北地方沿岸での最大津波高を出力した.
次にこの基本モデルの断層パラメタ,計算法をひとつずつ変えて津波を計算した.検討したケースは,基本モデルの傾斜60°に対して①45°と②75°のモデルを利用した場合,③1枚断層で近似したモデルを利用した場合,④斜面の水平移動の効果を無視した場合,⑤水理フィルタを無視した場合,⑥異なる断層スケーリング則を用いた場合,⑦津波計算に非線形分散波式を用いた場合の7ケースである.沿岸津波高について基本モデルとの残差を平均値で規格化した二乗平均平方根誤差(NRMSE)で評価した.
本検討において,沿岸最大津波高における基本モデルとの違いが大きかったのは⑥断層スケーリング則の違いであった(NRMSE~0.50).そして⑦分散のありなし(NRMSE=0.28),⑤水理フィルタのありなし(NRMSE=0.21),①②断層の傾斜を変えた場合(NEMSE~0.15),③1枚断層で近似した場合(NRMSE=0.10)と続く.アウターライズ地震は比較的平坦な大洋下で発生する高角な断層なので④斜面の水平移動による効果は比較的小さかった(NRMSE=0.025).
本研究は科研費JP15H05718の助成を受けています。記して感謝いたします。
地殻構造探査や海底観測の結果を参照して,日本海溝アウターライズ地震の9つの基本モデルを設定した.各基本モデルは長さ20km程度の複数の小断層で構成され,小断層の上端深さは全て海底下0.1km,傾斜は60°,すべり角は270°とした.地形や構造探査に基づいて走向を与えた.アウターライズ地震のスケーリング則(Álvarez-Gómez et al., 2012)を使って,全断層長(L)からMwをもとめた.断層幅(W)は地震発生層の下端に達するまでは L/W=1 で与えることとしたが,地震発生層の厚さ35kmでは9つの基本モデル全てで下端に達した.すべり量は断層面積とMwから求めた.半無限均質弾性体媒質を仮定して地殻変動を計算し(Okada, 1985),斜面の水平移動による津波励起の効果(Tanioka and Satake, 1996)と,水理フィルタ(Kajiura, 1963)を考慮した上で津波の初期水位分布とした.津波計算は非線形浅水波式を差分法で解くことによって行い,東北地方沿岸での最大津波高を出力した.
次にこの基本モデルの断層パラメタ,計算法をひとつずつ変えて津波を計算した.検討したケースは,基本モデルの傾斜60°に対して①45°と②75°のモデルを利用した場合,③1枚断層で近似したモデルを利用した場合,④斜面の水平移動の効果を無視した場合,⑤水理フィルタを無視した場合,⑥異なる断層スケーリング則を用いた場合,⑦津波計算に非線形分散波式を用いた場合の7ケースである.沿岸津波高について基本モデルとの残差を平均値で規格化した二乗平均平方根誤差(NRMSE)で評価した.
本検討において,沿岸最大津波高における基本モデルとの違いが大きかったのは⑥断層スケーリング則の違いであった(NRMSE~0.50).そして⑦分散のありなし(NRMSE=0.28),⑤水理フィルタのありなし(NRMSE=0.21),①②断層の傾斜を変えた場合(NEMSE~0.15),③1枚断層で近似した場合(NRMSE=0.10)と続く.アウターライズ地震は比較的平坦な大洋下で発生する高角な断層なので④斜面の水平移動による効果は比較的小さかった(NRMSE=0.025).
本研究は科研費JP15H05718の助成を受けています。記して感謝いたします。