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[SCG61-06] 西南日本、三重県の中央構造線断層帯の発展:歪の局所化と軟化についての一解釈
キーワード:中央構造線、マイロナイト、石英c軸ファブリック
中央構造線は、九州から関東山地まで800 km以上追跡される、日本で最も大規模な断層であるが、その起源は白亜紀後期に領家帯の花崗岩類に発生した剪断帯(マイロナイト帯)に遡ることが出来る。その後、古第三紀の初頭に、この剪断帯の部分が大規模正断層として再活動し、西南日本外帯の三波川高圧型変成岩と内帯の領家帯の花崗岩類および低圧型変成岩類の接合を引き起こした(狭義の中央構造線、例えばKubota and Takeshita, 2008)。さらに、その後も中央構造線は様々な時代に活動したが、特に、第四紀に顕著な右横ずれ断層として再活動している。
我々は、その形成以後複数回再活動した中央構造線について、その発生段階の過程を明らかにするため、現在の中央構造線のもとになった領家帯の花崗岩類起源のマイロナイト帯(いわゆる領家南縁剪断帯)に焦点を当て、上昇にともなう温度の低下とともにマイロナイト帯がどのように発展し、どのように歪が局所化していったのかを詳細に解析した。三重県松阪市飯高町月出の研究フィールドにおいて、東西走向で約60°北傾斜している中央構造線に直交する赤岩谷ルートにおいて、南北約800 m間の地質調査を行い、断層岩試料を定方位で採取した。その結果、我々は中央構造線に平行に延長される断層岩は、中央構造線から300 mの幅で分布するプロトマイロナイト(Area A)と、その北に約500 mの幅で分布するマイロナイト(Area B)に区分されることを明らかにした。さらに、断層岩を構成する鉱物モード組成をポイントカウンティングにより測定した結果、プロトマイロナイトはカリ長石を殆ど含まないトーナル岩を、一方、マイロナイトはカリ長石の巨晶を大量に含む花崗岩を原岩とし、変形の程度が原岩に支配されていることが明らかにした。
次に我々はプロトマイロナイト(7試料)およびマイロナイト(8試料)を構成する変形・再結晶石英集合体の微細構造を検討し、マイロナイト(Area B)を構成するに石英再結晶粒子ついて、中央構造線の北方300 mから490 mの距離に分布するものは高いアスペクト比と比較的平面状の粒子境界を示す一方(Sタイプ、亜結晶粒回転再結晶により形成)、490 mから800 mの距離に分布するものは低いアスペクト比と入り組んだ粒子境界(Pタイプ、粒界移動再結晶により形成)を示すことを明かにした。プロトマイロナイト中の石英再結晶粒子はSタイプの組織を持つ。さらに、石英の格子選択配向をSEM-EBSD装置を用いて測定した結果、プロトマイロナイトおよびマイロナイト試料とも殆どの試料が石英のc軸方位が中間主歪軸(Y)方位に集中するパターンを示す一方、プロトマイロナイトの一部でタイプIクロスガードルパターン、Sタイプ組織を持つマイロナイトの最南部中でY集中とタイプIクロスガードルパターンの中間型が認められることを明かにした。
我々はまた、SEM-EBSD測定から得られたデータについて、Grain Orientation Spread (GOS, Cross et al., 2017)法を用いて、石英再結晶粒子とレリクト粒子を厳密に分離し、マイロナイト中の石英再結晶粒径を厳密に求めた。その結果、再結晶粒径は最も北側のPタイプ組織を持つマイロナイトで最大100ミクロンを超えているが、Sタイプ組織を持つマイロナイトで11-20ミクロンに低下すること、また、プロトマイロナイト中の石英再結晶粒径は6-19ミクロンであることを明らかにした。さらに、マイロナイトを構成するカリ長石は、一部ミルメカイト(斜長石と石英の連晶)となっているが、2長石温度計を用い、マイロナイト形成時の変形温度を推定した。その結果、Pタイプ組織を持つマイロナイトの最北部で 500 °Cに至る温度が得られたが、南に向かって温度は低下し、Sタイプ組織を持つマイロナイトでは350-400 °Cの変形温度が推定された。この事実は、Pタイプ組織を持つマイロナイト中でカリ長石は塑性変形しているが、Sタイプ組織を持つマイロナイト中ではカリ長石は破断している事実と調和的である。
以上の観測事実をまとめ、我々は中央構造線断層帯における温度の低下にともなう歪の局所化を以下のように推察した。最初、500 °Cの温度条件ではカリ長石を大量に含む花崗岩がそれを含まないトーナル岩より流動的なため、花崗岩のみが変形しPタイプ組織を持つマイロナイトとなった。その後、450 °Cとなりトーナル岩も変形を開始するが、変形は引き続いて花崗岩中に集中するほか、350-400 °CではPタイプ組織を持つマイロナイトで変形が停止し、変形はSタイプ組織を持つマイロナイトに局所化した。ところが、Sタイプ組織を持つマイロナイト帯の部分が中央構造線に発達していった訳ではなく、300-350 °Cになって現在の中央構造線に沿う僅か50 mのウルトラマイロナイト帯(Czertowicz et al., 2019, PEPS, in press)に変形中心が突然ジャンプし、ここに最終的に歪が局所化し、中央構造線へと発展していった。
我々は、その形成以後複数回再活動した中央構造線について、その発生段階の過程を明らかにするため、現在の中央構造線のもとになった領家帯の花崗岩類起源のマイロナイト帯(いわゆる領家南縁剪断帯)に焦点を当て、上昇にともなう温度の低下とともにマイロナイト帯がどのように発展し、どのように歪が局所化していったのかを詳細に解析した。三重県松阪市飯高町月出の研究フィールドにおいて、東西走向で約60°北傾斜している中央構造線に直交する赤岩谷ルートにおいて、南北約800 m間の地質調査を行い、断層岩試料を定方位で採取した。その結果、我々は中央構造線に平行に延長される断層岩は、中央構造線から300 mの幅で分布するプロトマイロナイト(Area A)と、その北に約500 mの幅で分布するマイロナイト(Area B)に区分されることを明らかにした。さらに、断層岩を構成する鉱物モード組成をポイントカウンティングにより測定した結果、プロトマイロナイトはカリ長石を殆ど含まないトーナル岩を、一方、マイロナイトはカリ長石の巨晶を大量に含む花崗岩を原岩とし、変形の程度が原岩に支配されていることが明らかにした。
次に我々はプロトマイロナイト(7試料)およびマイロナイト(8試料)を構成する変形・再結晶石英集合体の微細構造を検討し、マイロナイト(Area B)を構成するに石英再結晶粒子ついて、中央構造線の北方300 mから490 mの距離に分布するものは高いアスペクト比と比較的平面状の粒子境界を示す一方(Sタイプ、亜結晶粒回転再結晶により形成)、490 mから800 mの距離に分布するものは低いアスペクト比と入り組んだ粒子境界(Pタイプ、粒界移動再結晶により形成)を示すことを明かにした。プロトマイロナイト中の石英再結晶粒子はSタイプの組織を持つ。さらに、石英の格子選択配向をSEM-EBSD装置を用いて測定した結果、プロトマイロナイトおよびマイロナイト試料とも殆どの試料が石英のc軸方位が中間主歪軸(Y)方位に集中するパターンを示す一方、プロトマイロナイトの一部でタイプIクロスガードルパターン、Sタイプ組織を持つマイロナイトの最南部中でY集中とタイプIクロスガードルパターンの中間型が認められることを明かにした。
我々はまた、SEM-EBSD測定から得られたデータについて、Grain Orientation Spread (GOS, Cross et al., 2017)法を用いて、石英再結晶粒子とレリクト粒子を厳密に分離し、マイロナイト中の石英再結晶粒径を厳密に求めた。その結果、再結晶粒径は最も北側のPタイプ組織を持つマイロナイトで最大100ミクロンを超えているが、Sタイプ組織を持つマイロナイトで11-20ミクロンに低下すること、また、プロトマイロナイト中の石英再結晶粒径は6-19ミクロンであることを明らかにした。さらに、マイロナイトを構成するカリ長石は、一部ミルメカイト(斜長石と石英の連晶)となっているが、2長石温度計を用い、マイロナイト形成時の変形温度を推定した。その結果、Pタイプ組織を持つマイロナイトの最北部で 500 °Cに至る温度が得られたが、南に向かって温度は低下し、Sタイプ組織を持つマイロナイトでは350-400 °Cの変形温度が推定された。この事実は、Pタイプ組織を持つマイロナイト中でカリ長石は塑性変形しているが、Sタイプ組織を持つマイロナイト中ではカリ長石は破断している事実と調和的である。
以上の観測事実をまとめ、我々は中央構造線断層帯における温度の低下にともなう歪の局所化を以下のように推察した。最初、500 °Cの温度条件ではカリ長石を大量に含む花崗岩がそれを含まないトーナル岩より流動的なため、花崗岩のみが変形しPタイプ組織を持つマイロナイトとなった。その後、450 °Cとなりトーナル岩も変形を開始するが、変形は引き続いて花崗岩中に集中するほか、350-400 °CではPタイプ組織を持つマイロナイトで変形が停止し、変形はSタイプ組織を持つマイロナイトに局所化した。ところが、Sタイプ組織を持つマイロナイト帯の部分が中央構造線に発達していった訳ではなく、300-350 °Cになって現在の中央構造線に沿う僅か50 mのウルトラマイロナイト帯(Czertowicz et al., 2019, PEPS, in press)に変形中心が突然ジャンプし、ここに最終的に歪が局所化し、中央構造線へと発展していった。