日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、座長:吉田 圭佑(東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻)、宇野 正起(東北大学)

09:30 〜 09:45

[SCG61-15] デジタル岩石亀裂を用いた亀裂内流体流動・比抵抗・弾性波速度シミュレーションと実験値との比較

*澤山 和貴1蒋 飛2石橋 琢也3辻 健4藤光 康宏4 (1.九州大学大学院工学府地球資源システム工学専攻、2.山口大学工学部機械工学科、3.国立研究開発法人産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所、4.九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

キーワード:デジタル岩石物理、弾性波速度、比抵抗、亀裂内流れ、格子ボルツマン法

亀裂内の流体流動特性は,地殻流体の挙動を律則し,岩盤の強度等にも影響を与える。そのため,地震発生や亀裂型貯留層(地熱貯留層やシェールガス)の定量的な評価を行う上でも,亀裂内流体流動を明らかにすることは極めて重要である。地殻流体の分布を把握するためには,電磁探査や地震探査などの物理探査手法がよく用いられる。しかしながら,比抵抗や弾性波速度と流体流動特性(浸透率など)を関連付ける岩石物理モデルが,亀裂を含む岩石において確立されておらず,物理探査の結果から亀裂内流体流動特性を詳細に検討することはできていない。また亀裂を含む岩石を用いてこれらの関連を同時に調べた研究もほとんど報告されていない。そこで本研究では,岩石亀裂を用いた実験に加え,これをデジタル化した数値モデルを用いて亀裂内流体流動・比抵抗・弾性波速度シミュレーションをそれぞれ行い,亀裂浸透率・比抵抗・弾性波速度の関連性を検討した。

 実験試料として,それぞれ異なる開口幅を持つ2種類の稲田花崗岩亀裂試料(直径50 mm,長さ80 mm)を用意し,有効封圧5–30 MPa下で室内透水試験を行い圧力増加に伴う浸透率変化を測定した。この試料の亀裂表面粗さをデジタル化することで,様々な開口幅の数値モデル(解像度0.1 mm)を作成し,実験と同一の試料で数値シミュレーションを行った。流体流動シミュレーションは格子ボルツマン法を用いて行い,得られた流体分布から比抵抗・弾性波速度を有限要素法解析により検討した。

 浸透率測定の実験結果から,圧力の増加によって浸透率が減少し,ある圧力を超えると浸透率の減少割合が変化する傾向が確認された。また数値シミュレーションの結果からも,亀裂開口幅を狭めるほど浸透率が減少し,ある一定の開口幅を超えると浸透率の減少割合が変化するという類似の傾向が確認された。さらに浸透率のマッチングによってこのときの亀裂形状を評価すると,この浸透率挙動の変化は亀裂接触面積がおよそ80%を超えると発生することが明らかとなった。このとき亀裂内の流路が大幅に制限され,亀裂スティフネスは急激に増加する傾向を示した。さらに,このしきい値の前後では比抵抗や弾性波速度の挙動も変化することが確認された。このことは,これら流体流動挙動の変化は,電磁探査や地震探査から検知可能であることを示唆している。