日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 変動帯ダイナミクス

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)

[SCG61-P10] 2000年鳥取県西部地震余震域における断層岩の鉱物組成およびその空間分布

*金木 俊也1廣野 哲朗1向吉 秀樹2小林 健太3竹下 徹4 (1.大阪大学大学院理学研究科、2.島根大学大学院自然科学研究科、3.新潟大学大学院自然科学研究科、4.北海道大学大学院理学院)

キーワード:2000年鳥取県西部地震、断層岩、鉱物組成、XRD分析

2000年10月6日鳥取県西部にてMw6.6の地震が発生した.本震は左横ずれ成分が卓越しており,震央は35.269 °N・133.357 °Eに位置していた.本震の破壊過程および滑り分布は地震時の強振動データおよび測地データから推定されており,本震の破壊は主に余震域の南部で発生したと報告されている.また,Yukutake et al. (2007) は余震のメカニズム解から本震前後の応力場を推定し,余震域の南部は北部や中央部に比べて摩擦的に非常に弱かった可能性があることを指摘している.しかし,断層物質の物性値の空間的均質性に着目して本震・余震の滑り挙動の地域性を理解しようとする試みはほとんど行われていない.

岩石の鉱物組成はその物性値を支配しうる要素の一つであり,一般的には摩擦的に弱い鉱物量が増えるほど断層岩の摩擦係数は劇的に減少する.よって,2000年鳥取県西部地震の余震域における滑り挙動の空間異方性を理解するためには,断層岩の鉱物組成の空間分布を明らかにすることが必要である.本研究では,余震域の北部・中部・南部に露出する14の断層露頭から100を超える岩石試料を採取し,粉末化した岩石に内部標準を加えた試料についてXRD分析を行った.得られたプロファイルを,鉱物定量解析ソフトRockJockを用いて解析することで,各試料の鉱物組成を定量的に推定した.その結果,破砕の影響を受けていない周囲の母岩はほとんどが花崗岩であり,採取した地域によらず同じような鉱物組成(主に石英・長石)を持つことがわかった.一方,断層岩の鉱物組成は明確な地域依存性を示し,北部ではハロイサイトの増加とカリ長石の減少,中部ではイライトの増加とカリ長石・斜長石の減少,南部ではハロイサイトの増加と斜長石の減少が確認された.これらの解析結果をもとにして各地域における代表的な断層岩を選定し,摩擦実験を行って摩擦強度やその速度依存性を調べることで,2000年鳥取県西部地震余震域における摩擦特性の空間分布を明らかにできると考えられる.また得られた物質科学的なデータを観測データと組み合わせることで,2000年鳥取県西部地震の本震・余震の滑り挙動の空間異方性に関する理解をさらに深めることが期待される.