日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] 固体地球科学における機械学習の可能性

2019年5月26日(日) 09:00 〜 10:30 304 (3F)

コンビーナ:内出 崇彦(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:内出 崇彦(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、小田 啓邦

10:05 〜 10:25

[SCG62-05] 深層学習による桜島噴火予測

★招待講演

*村田 剛志1 (1.東京工業大学)

キーワード:噴火予測、桜島、深層学習

日本は世界有数の火山国であり、世界の活火山の約7%が存在する。火山の噴火は時として甚大な人的・物的被害を及ぼすものであり、2014年の御嶽山や2018年の草津白根山での火山災害は記憶に新しい。火山活動を正確に把握して必要な対応を取ることは、専門家のみならず周辺地域の多くの人々にとっての重大な関心事である。
噴火予測などの火山の研究は、これまでは火山物理学からのアプローチが主であったが、火山周辺に設置された伸縮計や地震計などから観測される時系列データを用いた情報学的なアプローチによって、新たな展開や可能性が見えてくると期待される。
火山の観測装置から得られる時系列データは噴火と大きな関係があるが、一般にデータは複雑で、専門家にとっても分析は容易ではない。我々は火山噴火分類と火山噴火予測の二つの問題に注目した。前者の目標は、100分間の時系列データからその100分間に火山が噴火するか否かを分類することであり、また後者の目標は、100分間の時系列データから兆候を認識してその直後の60分間に火山が噴火するか否かを予測することである。
前者については、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を時系列データに対して適用するVolNetを提案した。実際のデータを用いて火山噴火分類を行ったところ、F-scoreで90%程度の精度を達成した。
また後者については、時系列データにおける時間変化を検出するためにStacked 2-Layer LSTMを用いて実験を行った結果、噴火・非噴火の2クラス平均のF値による精度で66.1%であった。また、与えられた時系列データを”Non-eruption”, “May-eruption”, “Warning”, “Critial”の4つに分類する警告システムを構築したところ、”Critial”に分類された時系列データで噴火が起こったものの割合は51.9%であった。
我々は京都大学防災研究所附属火山活動研究センター長の井口正人教授の協力のもと、火山に関する最大級の規模と質の時系列データを用いた実験によって、提案手法の有効性を示した。また国内および海外での火山噴火のニュースが多い昨今において、AIを用いて噴火を予測するというテーマは社会的にも関心を集め、日本経済新聞での記事、NHK鹿児島でのローカルニュース、南日本新聞での記事、月刊誌(みずほ総合研究所「Fole」)での記事など、多くのメディアで取り上げていただいた。