[SCG62-P06] 埋込み機械学習による長周期波形からの広帯域地震動合成
キーワード:地震動予測、埋込み
将来起こると想定される大地震の被害推定を目的として、広帯域地震動予測が行われている。現在、標準的に用いられるハイブリッド合成法では、長周期帯域を数値シミュレーション、短周期領域を統計的手法により計算し合成している。しかし、両帯域の波形が独立な計算で得られるため、走時や周波数特性に不整合が見られることがあるという課題がある。
そこで、観測記録から長周期帯域と短周期帯域の関係性を抽出することで、長周期帯域のシミュレーション結果を元に短周期成分を生成し、広帯域地震動を合成する手法が提案されている(Iwaki et al., 2016; Paolucci et al., 2018)。Iwaki et al. (2016)では、異なる帯域間における時刻歴包絡波の関係性を、対象の地震に類似した地震の観測記録からモデル化してしている。本発表ではこの関係性を、機械学習を用いてK-NETに蓄積された多数の観測記録からモデル化する方法を試みた。
まず、観測波形にフィルタ処理を施し、長・短周期帯域の包絡波の対を生成する。各帯域において、異なる観測波形の包絡波間の類似度を最適輸送理論におけるWasserstein距離で測定する。このように得られる長・短周期のWasserstein空間の間の関係性を抽出するために、t-SNE(van der Maaten and Hinton, 2008)を拡張した埋込み手法により、各観測記録を共通の埋込み空間で表現した。埋込み空間は両帯域の波形の距離関係を保つように構成され、帯域間の関係性を反映している。よって、長周期シミュレーション波形が得られると、埋込み空間に写像することで、近傍の要素から短周期の包絡波を内挿することができる。この内挿は、最適輸送理論のBarycenterの概念を用いて自然に構成することができる。
また、周波数特性はニューラル・ネットワークを用いて推定した。入力を地震マグニチュードと長周期の振幅スペクトル3成分、出力を短周期の振幅スペクトル3成分に設計した。訓練時には、まず多数の観測点での記録を、座標系を回転して増大させることでデータ数を確保し、過学習を防いだ。次に推論対象となる観測点での記録のみを用いて学習し、サイト特性を表現できるように工夫した。最後に、推定した包絡波と振幅スペクトルから、乱数位相を用いて短周期帯域の時刻歴波形を作成し、長周期シミュレーション波形と組み合わせて広帯域地震動を合成する。
本発表では、2008年に茨城県沖で発生したM7.0の地震を対象に、手法の有効性を検証した。長周期波形にはシミュレーション波形の代わりに観測波形を用いた。提案手法は経時特性の再現性に優れ、応答スペクトル特性も同等以上の性能を示した。本手法には、別の地震や想定地震を扱う際に、地盤モデルや地震の選択といった任意性を伴わないという利点がある。
そこで、観測記録から長周期帯域と短周期帯域の関係性を抽出することで、長周期帯域のシミュレーション結果を元に短周期成分を生成し、広帯域地震動を合成する手法が提案されている(Iwaki et al., 2016; Paolucci et al., 2018)。Iwaki et al. (2016)では、異なる帯域間における時刻歴包絡波の関係性を、対象の地震に類似した地震の観測記録からモデル化してしている。本発表ではこの関係性を、機械学習を用いてK-NETに蓄積された多数の観測記録からモデル化する方法を試みた。
まず、観測波形にフィルタ処理を施し、長・短周期帯域の包絡波の対を生成する。各帯域において、異なる観測波形の包絡波間の類似度を最適輸送理論におけるWasserstein距離で測定する。このように得られる長・短周期のWasserstein空間の間の関係性を抽出するために、t-SNE(van der Maaten and Hinton, 2008)を拡張した埋込み手法により、各観測記録を共通の埋込み空間で表現した。埋込み空間は両帯域の波形の距離関係を保つように構成され、帯域間の関係性を反映している。よって、長周期シミュレーション波形が得られると、埋込み空間に写像することで、近傍の要素から短周期の包絡波を内挿することができる。この内挿は、最適輸送理論のBarycenterの概念を用いて自然に構成することができる。
また、周波数特性はニューラル・ネットワークを用いて推定した。入力を地震マグニチュードと長周期の振幅スペクトル3成分、出力を短周期の振幅スペクトル3成分に設計した。訓練時には、まず多数の観測点での記録を、座標系を回転して増大させることでデータ数を確保し、過学習を防いだ。次に推論対象となる観測点での記録のみを用いて学習し、サイト特性を表現できるように工夫した。最後に、推定した包絡波と振幅スペクトルから、乱数位相を用いて短周期帯域の時刻歴波形を作成し、長周期シミュレーション波形と組み合わせて広帯域地震動を合成する。
本発表では、2008年に茨城県沖で発生したM7.0の地震を対象に、手法の有効性を検証した。長周期波形にはシミュレーション波形の代わりに観測波形を用いた。提案手法は経時特性の再現性に優れ、応答スペクトル特性も同等以上の性能を示した。本手法には、別の地震や想定地震を扱う際に、地盤モデルや地震の選択といった任意性を伴わないという利点がある。