日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM19] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 304 (3F)

コンビーナ:相澤 広記(九州大学大学院理学研究院附属・地震火山観測研究センター)、松野 哲男(神戸大学海洋底探査センター)、座長:松野 哲男相澤 広記

09:30 〜 09:45

[SEM19-03] 動的電磁誘導により生成される地震波到達前の電磁場変動の観測波形と理論波形

*山崎 健一1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:電磁場、動的電磁誘導、地震動

地震動は、大地の電磁気物性を介して電磁場変動を生成する。この現象は、存在自体は理論的には明らかであり、観測例もある。その中には、電磁場変動が地震波到達に先行するものもある[e.g. Iyemori et al. 1996 (JGG); Honkura et al. 2002 (EPS); Okubo et al. 2011 (EPSL)]。地震波に伴う電磁場変動の生成メカニズムには、界面導電現象[Pride, 1994 (PR E)]、動的電磁誘導[Gao et al. 2014 (JGR)]、ピエゾ磁気効果[Yamazaki 2016 (GJI)]、ピエゾ電気効果[Ogawa and Utada 2000a (PEPI), 2000b (EPS)]などがある。しかし、特に地震波到達に先行する電磁場変動については、いずれのメカニズムから生じたものかは定量的には明らかではない。その解明には、各メカニズムを介して生成される電磁場変動の理論値を計算して、観測される変動の定性的・定量的な特徴を説明しうるか検討することが必要である。

本研究では、動的電磁誘導効果に焦点を絞り、単純化したモデルによって報告されている地震波到達前の電磁場変動が説明できるのかを確かめた。先行研究[Gao et al. 2014]では、無限媒質中のダブルカップル震源から生成される地震動に付随する電磁場変動を解析的に求めている。彼らの結果は、地震動に先行する電磁場変動は報告されている値よりも数桁小さいことを示している。今回は、現実の地殻の構造により近づけるため、一様電気伝導度を持った半無限媒質の大地と絶縁大気からなるモデルを考察した。円柱座標において適当な変数変換を行い、さらにハンケル変換を行うことにより、支配方程式は鉛直座標のみに関する常微分方程式に帰着する。その解を求めて逆ハンケル変換を行うことにより、電磁場変動の理論波形を求めることができる。この方法はSGEPSS2018年秋学会すでに発表したとおりである。

地震波到達前の電磁場変動の例として、1999年の Izmit 地震(トルコ)の時のもの[Honkura et al. 2002]と、2008年岩手宮城内陸地震の時のもの[Okubo et al. 2011]を対象として比較のための計算を行った。これら二つの地震の際に観測された電磁場変動は、時系列のパターンが異なる。前者では、地震波が観測点のごく近傍に達してから磁場変化が始まっていた。後者では、震源断層での破壊(滑り)の開始とほぼ同時に電磁場変化が始まっていた。それぞれの震源-観測点配置などを単純化した模型で計算を行ったところ、前者についてはある程度特徴を再現することができたが、後者については特徴を正しく再現することができなかった。