11:45 〜 12:00
[SEM19-11] 中国・四国地方の基盤的比抵抗構造調査(2018年度)
キーワード:電気比抵抗、中国・四国地方、基盤的構造調査
【背景・目的】本研究では、地震・火山噴火による災害の軽減に貢献するために、中国・四国地方において基盤的な比抵抗構造調査を行い、地殻・マントル上部の空間・構造的不均質性を明らかにすることを目的とする。山陰地域では、歪み集中帯外における地震発生と比較的長い期間に噴火記録のない火山と地殻流体との関連を解明すること、内陸地震発生域と内陸地震空白域および深部低周波地震域の構造的不均質性、また、四国地方では、地殻地震およびスロー地震の発生様式と構造的地域性等について、沈み込む海洋プレートから供給が想定される流体と関連づけることが重要である。
これまでに京都大学防災研究所並びに鳥取大学大学院工学研究科を中心とする研究グループは、山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた。例えば、山陰地方東部では、鳥取地震(1943年、M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして、顕著な地震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線でMT調査を実施し、ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って、高比抵抗領域である地震発生層の下、地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした。これと調和的な研究成果が測地学研究から示された。国土地理院GPS電子基準点データ解析により、鳥取・島根北部が南部に対して相対的に東に5mm/年で変位しており、歪みが集中しつつあることが判明し、この「ひずみ集中帯」と1943年鳥取地震、1983年鳥取県中部の地震、2000年鳥取県西部地震との関連が示唆された(西村(2015))。
しかしながら、先述の山陰地方の比抵抗研究グループが提唱してきたモデルと調和しない比抵抗研究の成果(例えば、塩崎他(2015))も示された。もし、内陸地震が地震活動帯直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾、2009)ならば、この不均質構造について今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要である。
一方、四国地方においては、主に外帯での調査結果から上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在し、それと中央部・西部では無地震域との明瞭な関連が示唆された。地震現象の統一的理解のためには、スロー地震の活動様式だけでなく発生環境や発生原理の解明の重要(小原(2017))であるため、大局的な比抵抗構造の地域特性を解明するための基盤的比抵抗構造調査が求められる。
【実施内容】このような背景のもと、山陰地方においては2016年に発生した鳥取県中部(M6.6)の地震震源断層周辺域の不均質構造の実態の解明を目的として、既存観測では取得されていない南側延長部ならびに西方域の比抵抗構造の推定精度をあげるために、鳥取・岡山県境脊梁部ならびに鳥取県中西部域において追加観測を実施した。観測は2018年11月初旬から12月初旬にかけて合計12地点で、自然界に存在する微弱な電磁場変動を信号とする広帯域MT法観測を実施した。広帯域MT法観測にはフェニックス社製の測定器MTU-5およびMTU-5Aを使用し、原則として地磁気3成分と電場2成分を測定した。震央を横切る南北測線において東西走向の2次元構造をもつものと仮定してOgawa and Uchida(1996)のコードを用いて構造解析を行った。その結果、震源域の南側地殻深部にみられていた低比抵抗領域の南限位置を確認することができた。
中国・四国地方では大局的な3次元比抵抗構造の解明を目指し、2017年度研究と同様、新規ならびに再解析・既存データを活用・統合して各地点で得られたdeterminant impeadanceデータに対して1次元Occam inversionを実施し、中国・四国地方における深度別比抵抗分布図を作成した。10km深度の比抵抗分布図から、山陰地方の地殻深部の低比抵抗領域はある程度の規模を持って東西方向に連続的に存在することが再確認された。四国地方では、中央構造線周辺域を境とする相対的な高/低の比抵抗構造の存在が顕著である。瀬戸内海側の観測の空白域はあるものの、その高比抵抗地殻の北部延長に関しては、山陰地方の低比抵抗領域の南限までの連続性が示唆される。また、この深度において地殻地震の震央分布との対応関係をみれば、中央構造線周辺北側・内帯では、高比抵抗域もしくはその境界領域と明瞭な対応がみられるが、この関連性は山陰地方におけるそれと共通する知見である。
【謝辞】四国地方の観測研究では主に文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画、また、鳥取県中西部の地震域周辺のデータ取得には2018年度鳥取県環境学術研究等振興事業の支援を受けた。本観測では京都大学防災研究所の共同研究機器を使用した。参照磁場記録は日鉄鉱コンサルタント株式会社の無償提供データである。ここに謝意を表す。
これまでに京都大学防災研究所並びに鳥取大学大学院工学研究科を中心とする研究グループは、山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた。例えば、山陰地方東部では、鳥取地震(1943年、M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして、顕著な地震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線でMT調査を実施し、ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って、高比抵抗領域である地震発生層の下、地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした。これと調和的な研究成果が測地学研究から示された。国土地理院GPS電子基準点データ解析により、鳥取・島根北部が南部に対して相対的に東に5mm/年で変位しており、歪みが集中しつつあることが判明し、この「ひずみ集中帯」と1943年鳥取地震、1983年鳥取県中部の地震、2000年鳥取県西部地震との関連が示唆された(西村(2015))。
しかしながら、先述の山陰地方の比抵抗研究グループが提唱してきたモデルと調和しない比抵抗研究の成果(例えば、塩崎他(2015))も示された。もし、内陸地震が地震活動帯直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾、2009)ならば、この不均質構造について今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要である。
一方、四国地方においては、主に外帯での調査結果から上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在し、それと中央部・西部では無地震域との明瞭な関連が示唆された。地震現象の統一的理解のためには、スロー地震の活動様式だけでなく発生環境や発生原理の解明の重要(小原(2017))であるため、大局的な比抵抗構造の地域特性を解明するための基盤的比抵抗構造調査が求められる。
【実施内容】このような背景のもと、山陰地方においては2016年に発生した鳥取県中部(M6.6)の地震震源断層周辺域の不均質構造の実態の解明を目的として、既存観測では取得されていない南側延長部ならびに西方域の比抵抗構造の推定精度をあげるために、鳥取・岡山県境脊梁部ならびに鳥取県中西部域において追加観測を実施した。観測は2018年11月初旬から12月初旬にかけて合計12地点で、自然界に存在する微弱な電磁場変動を信号とする広帯域MT法観測を実施した。広帯域MT法観測にはフェニックス社製の測定器MTU-5およびMTU-5Aを使用し、原則として地磁気3成分と電場2成分を測定した。震央を横切る南北測線において東西走向の2次元構造をもつものと仮定してOgawa and Uchida(1996)のコードを用いて構造解析を行った。その結果、震源域の南側地殻深部にみられていた低比抵抗領域の南限位置を確認することができた。
中国・四国地方では大局的な3次元比抵抗構造の解明を目指し、2017年度研究と同様、新規ならびに再解析・既存データを活用・統合して各地点で得られたdeterminant impeadanceデータに対して1次元Occam inversionを実施し、中国・四国地方における深度別比抵抗分布図を作成した。10km深度の比抵抗分布図から、山陰地方の地殻深部の低比抵抗領域はある程度の規模を持って東西方向に連続的に存在することが再確認された。四国地方では、中央構造線周辺域を境とする相対的な高/低の比抵抗構造の存在が顕著である。瀬戸内海側の観測の空白域はあるものの、その高比抵抗地殻の北部延長に関しては、山陰地方の低比抵抗領域の南限までの連続性が示唆される。また、この深度において地殻地震の震央分布との対応関係をみれば、中央構造線周辺北側・内帯では、高比抵抗域もしくはその境界領域と明瞭な対応がみられるが、この関連性は山陰地方におけるそれと共通する知見である。
【謝辞】四国地方の観測研究では主に文部科学省による災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画、また、鳥取県中西部の地震域周辺のデータ取得には2018年度鳥取県環境学術研究等振興事業の支援を受けた。本観測では京都大学防災研究所の共同研究機器を使用した。参照磁場記録は日鉄鉱コンサルタント株式会社の無償提供データである。ここに謝意を表す。