日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 303 (3F)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)、座長:田中 俊行風間 卓仁

14:15 〜 14:30

[SGD01-03] 東南極ドロンニングモードランドの露岩域における絶対重力およびGNSS測定

*風間 卓仁1青山 雄一2福田 洋一1土井 浩一郎2 (1.京都大学理学研究科、2.国立極地研究所)

キーワード:南極氷床、絶対重力、相対重力、GNSS、トロール基地、マイトリ基地

南極氷床は長期の全球気候変動に大きな役割を果たしていて、将来の気候変動を予測するには南極氷床の時空間変動を詳細に把握することが重要である。いま氷床変動に伴う固体地球の荷重変形応答に注目すると、この応答には「現代の氷床変動に伴う弾性的地殻変動」と「過去の氷床変動に伴う粘弾性的地殻変動」の2種類が存在する。これらは地殻変動観測のみから分離することは困難であるものの、地上重力変化を同時に観測することで両者を分離することが可能である。しかしながら、南極地域で重力変化を観測している地点は非常に少ないため、固体地球科学の観点から南極氷床変動を詳細に理解するには南極のより多くの地点で重力観測を継続的に実施する必要がある。
そこで本研究は、南極氷床の大部分を占める東南極ドロンニングモードランドの2つの露岩域において、Micro-g LaCoste社製FG5絶対重力計(#210)を用いた絶対重力測定を2018年11月~12月に実施した。まず、我々は11月13日~26日の日程でノルウェーのトロール基地(南緯72.01度、東経2.53度)に滞在し、重力計室の基台(基準点名:Troll AA)上で絶対重力値を測定した。当初は寒さの影響で真空ポンプが作動しないなどのトラブルがあったものの、滞在6日目の11月18日に絶対重力測定を開始することができた。11月22日までの5日間で計178セットの重力データを取得し、それらの平均値として絶対重力値982,360,741.41 +/- 1.16 +/- 1.82 microGalを得た。次に、我々は11月26日~12月4日の日程でインドのマイトリ基地(南緯70.77度、東経11.73度)に滞在し、同様に重力計室の基台(基準点名:Maitri AB)上で絶対重力値を測定した。11月28日~12月1日の4日間で計112セットの重力データを取得し、それらの平均値として982,576,883.10 +/- 1.23 +/- 1.83 microGalを得た。
本研究で得られた絶対重力値を2012年1月~2月の測定結果(Dr. Jaakko Mäkinen, personal communication)と比較すると、約7年間にトロール基地では-4.4 microGal、マイトリ基地では-4.2 microGalだけ絶対重力値が減少していることが分かった。この原因としては地表面の沈降や基地周辺の氷床質量の損失が考えられる。なお、両基地では絶対重力と同時にGNSSデータを取得したので、このGNSSデータから地殻変動量を把握することで重力減少の原因を定量的に理解することができると期待される。