日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 303 (3F)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)、座長:名和 一成本多 亮(山梨県富士山科学研究所)

15:30 〜 15:45

[SGD01-07] 絶対重力の長期変動から読み解く桜島の火山活動(2009年~2018年)

*大久保 修平1山本 圭吾2井口 正人2田中 愛幸3今西 祐一1西山 竜一1安藤 美和子1渡邉 篤志1 (1.東京大学地震研究所、2.京都大学防災研究所、3.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:絶対重力、桜島火山

[1] はじめに
われわれは桜島火山において、2008年4月から2019年2月現在まで10年以上の長期にわたって絶対重力観測を行ってきた。この間に、火山活動は2009年に本格化し、およそ2015年までの7年間は、毎年の爆発回数が500~1000回にも及んだ。ことに2015年8月15日にはダイク貫入イベントが発生し、多数の火山性地震および10cmを超える地殻変動が観測され、噴火警戒レベルが4まで上げられるなど緊迫した事態も生じた。しかし、このイベント直後に爆発・噴火活動はかえって劇的に低下するという予想外の展開となった。本講演では、上述の火山活動が、長期的な重力変動データから、どのように解釈されるかについて議論する。

[2] 重力変動の特徴とその解釈
重力観測データには、降雨等に伴う陸水変動による重力擾乱や、不圧地下水の潮汐等、火山活動とは独立な要因で変化する成分が含まれている。これらの擾乱を除去する手法については、Kazama and Okubo (2009)や、Okubo et al (2014)で開発してきた。これらの擾乱を取り除いた後の重力シグナルを調べたところ、(1)~(3)に示す火山活動期ごとに、それぞれ特徴的な変動を示していることがわかった。
(1) ブルカノ式噴火期(2009年~2015年7月)
重力は±10microgalの変動幅におさまり、噴火活動が低調な時期には重力増加が、活発にな時期には重力減少が見られる。深さ5㎞程度のマグマだまりへのマグマ供給と、噴火による物質放出とが動的平衡状態にあると考えられる。
(2) ダイク貫入イベント(2015年8月前後)
6 microgalの重力減少が、10 microradian 程度の地殻変動と同期して(タイムラグなし)で生じた。両者の変動のタイムスケールはともに、12-18時間前後で完結している。
(3) 爆発活動が急激に静穏化した時期(2015年後半~)
重力は概ね10microgal/yrで単調に増加し、マグマ溜りの収縮を示唆する。
上記のさまざまな特徴は、火道の「開口 ・閉塞」状態のスイッチングを反映している。すなわち(1)では、火道が開口状態にあって、周囲に生じる弾性変形が小さく、重力変動の大部分が火道内のマグマ頭位変化=線質量の長さ変化ととらえることができる。その後、火道が火道が閉塞させられ、地殻の弾性変形が生じた(2)の段階を経て、現在はマグマ溜りの収縮過程にある可能性がある。