日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 303 (3F)

コンビーナ:兒玉 篤郎(国土交通省国土地理院)、岡 大輔(地方独立行政法人北海道立総合研究機構環境・地質研究本部地質研究所)、座長:名和 一成本多 亮(山梨県富士山科学研究所)

16:00 〜 16:15

[SGD01-09] 局地客観解析を用いた大気引力効果の評価

*田中 俊行1 (1.公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

キーワード:重力、局地客観解析、大気

東濃地震科学研究所(TRIES)では,地下水を含めた地下の質量変動をモニターするために,瑞浪超深地層研究所の地上と地下で重力連続観測を継続している(Tanaka and Honda, 2018, doi:10.1002/2017EA000311).これら2台の重力計間の質量変動は2台の重力差から評価出来る.また,2台の重力和は,地上重力計位置より上方と地下重力計位置より下方からの引力効果を反映する.地震に関連した重力変動,即ち,地下重力計位置より下方からの引力効果を抽出するためには,地上重力計より上方の大気引力効果を補正する必要がある(簡単のため,ここでは大気荷重変形効果と観測点近傍の高地の存在は無視する).
これまでTRIESは,重力観測点を中心とする10°×10°×100hPa面(経度方向約900 km × 緯度方向約1100 km × 高度約16 km)の範囲の大気引力効果の計算には,メソ客観解析(MANAL)を用いてきた.これは,全球総和の大気引力効果時間変動振幅の6割程度を占める.
2018年より局地客観解析(LANAL)が公開開始となった.格子間隔はMANALとLANALは同じ5 kmだが,LANALは等気圧面(P面)数がMANALから1つ(975 hPa面)増えた.これにより観測点に近い高度の空間分解能が向上した.そして,時間間隔がMANALの3時間から1時間になった事で,時間分解能も向上した.したがって,大気引力効果の評価にMANALからLANALへの更新を見当する必要が生じた.
LANALも他の客観解析同様,GRIB2フォーマットで提供される.GrADS (http://cola.gmu.edu/grads/)を用いてLANALデータにアクセスするが,MANALでも見られたように,g2cltもしくはalt_g2ctlコマンドで生成されるコントロールファイルのままでは正常に表示出来なかった.コントロールファイルのPDEF行で,1になっているjref変数をjsize変数の値に変更する必要がある.また,地形面での大気密度計算やP面と地形高度の比較の必要性から,同梱される地形データ(4byte実数バイナリー)を使用する.これについてもMANAL同様の仕様で,GrADSの描画では南北方向が反転する.これを修正するため,北西端を開始点として格納されているデータを南西端を開始点として格納しなおした(処理系によってはバイトスワップも必要).後は,MANAL用に開発した手順に準じて,大気引力効果の計算を行った.
本稿執筆時点では,2018年3月の1ヶ月間のみの計算結果であるが,同時刻数値の差の標準偏差は0.66 microGal,瞬間値では最大2.4 microGalの差が生じた.これまで用いてきたMANALとは有意な差がある.今後,重力観測データへの適用により,MANAL利用との違いを評価したい.