日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 宇宙測地学の工学利用

2019年5月28日(火) 09:00 〜 10:30 105 (1F)

コンビーナ:島田 誠一(東京大学大学院新領域創成科学研究科 株式会社日豊)、六川 修一(東京大学)、宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、辻井 利昭(公立大学法人大阪府立大学 大学院工学研究科 航空宇宙海洋系専攻)、座長:愛知 正温酒井 和紀

09:00 〜 09:15

[SGD02-01] 地殻変動補正と精密重力ジオイドが導く高精度3次元測位社会の未来

*矢萩 智裕1小門 研亮1吉田 賢司1豊福 隆史1岩田 昭雄1宮原 伐折羅1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:地殻変動補正、重力ジオイド・モデル、航空重力

2018年11月に準天頂衛星による高精度なセンチメートル級測位補正サービス(CLAS)が開始されるなど、近年,GPSや準天頂衛星等を利用した衛星測位技術が発達し,高精度な位置情報を誰でも簡易に利用できる環境が整いつつある。衛星測位の利活用は、基準点の維持管理や公共工事用の位置基準の決定といった従来の測量用途から、自動運転、ICT施工、スマート農業、ドローン宅配等の様々な分野に拡大しており、測位結果を矛盾なく利用するための仕組み作りが必要となるとともに、3次元空間で位置情報が利活用できる環境整備が求められる。

我が国の位置情報の基盤である基準点の位置は、過去のある時点(元期)における座標で管理され、地図等の地理空間情報もこれら基準点の位置情報に基づいて整備されている。一方、測位手法の中には、CLASをはじめとする現在(今期)の位置情報を決定する技術もあり、地殻変動の影響によって、衛星測位の精度が上がれば上がるほど、得られる位置情報と既存の地理空間情報の位置との不整合が問題となる可能性がある。また、我が国の標高は、明治以来国土地理院が全国で繰り返し実施してきた水準測量を基盤とした仕組みとなっている。衛星測位で得られる楕円体高を標高に換算するためには、重力データから計算できる標高の基準(ジオイド)の情報によって補正する必要があるが、既存の重力データの品質では水準測量に置き換えられる精度のジオイド・モデルを構築できないという課題もある。

上記の背景を踏まえ、国土地理院では、2020年を目途に測位結果と既存の地理空間情報とを整合させる仕組みである地殻変動補正システムを構築することとし、2019年1月から3月までテスト版の計算サイトを公開し利用者のニーズを把握した。また、衛星測位から高精度な標高を得られる環境を整備するため、2019年度から4年かけて航空重力測量により全国の重力データを取得し、2024年度までに全国で精度3cm以内の精密重力ジオイド・モデルを構築するプロジェクトを立ち上げ、2018年度は重力計調達のほか、地上検定線の設置、測線の設計等の準備を行っている。さらに、これらのデータを活用した3次元位置情報サービスの可能性を探るため、産官学各分野への関係者へのヒアリング調査も進めている。本講演では、3次元測位情報の高度利用に向けた国土地理院の取組について報告する。