日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 宇宙測地学の工学利用

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:島田 誠一(東京大学大学院新領域創成科学研究科 株式会社日豊)、六川 修一(東京大学)、宮原 伐折羅(国土交通省国土地理院)、辻井 利昭(公立大学法人大阪府立大学 大学院工学研究科 航空宇宙海洋系専攻)

[SGD02-P03] 地下水利用に起因するGEONET観測点上下成分の年周・長期変動

*島田 誠一1愛知 正温1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科 )

キーワード:GNSS測定、GEONET、地下水利用、年周変動、長期変動

GEONETの多くの観測点において,地下水の利用に起因する上下成分の年周・長期変動などが観測されている.地下水汲み上げに伴う地盤の上下変動観測は,地下水位や気象要素の観測と並んで,地下水循環モデル確立のために不可欠な観測要素である.国土地理院は上下変動のモニター手段を,従来の水準測量からGNSSなど宇宙測地手法へと転換しようとしており,近い将来GNSS観測による上下変動観測手法は,地下水循環モデルを通じて,地下水利用とその管理に不可欠な観測ツールとなっていく可能性が高い.地下水利用において大きな障害の一つである地盤沈下を観測するために,近い将来大量の地下水を汲み上げる水井戸近傍には,GNSS観測のためのアンテナ基台設置が不可欠になっていくであろう.

 本講演では,GEONET観測点のうち,関東地方及び新潟県にある152点を解析して明らかにされた,地下水利用に伴う年周変動及び長期のsecular変動の例を紹介する.解析ではまず東アジア及び周辺域の23点のIGSを座標基準点としてGEONET観測点の日値座標値を求めた.座標基準系としてITRF2014,マッピング関数としてVMF1マッピング関数を用い,カットオフ仰角は10°とした.また,毎時の天頂遅延量と4時間毎の大気勾配を,観測点座標値・ambiguityとともに推定した.次に30日windowのKalmanフィルタを適用して短周期の変動を取り除き,年周・半年周変動やsecular変動などの上下変動を,長期間の観測データから明らかにした.

 関東地方の観測点においては,埼玉県を中心とした関東平野中部~北部における地下水の農業利用による上下変動が検出されている.例えば,国土地理院構内にあるつくば1観測点(92110点)では,近傍のVLBI観測や地下水位観測と調和的な,夏季に沈降する年周変動が観測されており,周辺の水田における地下水の農業利用のための地盤変動と考えられている(飛田ほか,2004; Munekane et al., 2010; Shimada et al., 2017).

九十九里地域では水溶性天然ガス採取のための大きな沈降変動が観測されている.この地域の大網白里観測点(93027点)と長生観測点(93033点)では,冬季に沈下する年周変動のほか,水準変動やInSAR観測と調和的な長期にわたる地盤沈下が観測されている(原田,2018; 島田ほか,2018).

新潟平野を含む新潟県内では,消雪用の地下水利用が盛んに行われており,このための上下変動が観測されている.例えば三条市内の新潟栄観測点(970810点)では,冬季に沈降する年周変動のほか,特に積雪量が多く地盤沈降量が大きかった年に,非弾性的な永年沈下の進行が見られている(島田,2018).